久しぶりに会った愛しい人は何やら衰弱してました。私はバトルとかしないからよく解らないけど、ジムリーダーの仕事って大変なんだろうなというくらいは彼を近くで見ていたら解る。まあグリーンの場合は、サボってたらそのツケが回ってきましたっていう感じなんだろうけど。

「疲れてますねグリーンさん」
「おー…。2時間くらいしか寝てないのが一週間も続けばこうなる」
「グリーンって私の私生活にはお母さんみたいにごちゃごちゃうるさいけど、自分が1番ダメな私生活を送ってるんじゃないの?」
「俺はいいんだよ。誰かさんと違って遥かに自己管理とか出来てっから」
「そういう問題じゃなくてさ…っていうか、誰かさんって誰のこと?」
「熱があるのに気付かないまま仕事に行っちゃう**ちゃんです」
「ちゃん付け気持ち悪っ!」

ぐったりとベッドに身体を沈ませるグリーンから聞こえてくるのは、疲労感たっぷりの声。
グリーンの場合、酷い私生活を送っていたとしても確かに自己管理とか完璧そうで、余計な心配なのかもしれない。いやでもね、こんなにも衰弱しきってる恋人を見たら、いくら彼が自己管理が出来ていようと普通に心配になる訳で。無理してるんじゃないの、って思ってしまう。今日だって会う予定なんか無かったのにジムの仕事を終わらせたグリーンは、こうして私に会いに来てくれた。すごく嬉しいんだけど、心配なものは心配。

「ねえグリーン?」
「んー?なんだよ」
「今日はもう帰ったら?」
「……はあ?」

私と一緒に居たら余計に疲れちゃうだろうし、たまには一人でゆっくりと身体を休ませた方がいいんじゃないかと思って出た発言に、なに言ってんだテメエとでも言われそうな勢いの「はあ?」をもらった。
え、今のってそんなに怒られるような事だった?私としては、気が利く彼女のつもりだったんだけども。

「…俺が帰ったら**はどうすんだよ。浮気でもすんのか?」
「なんでそうなるの。…別になんかするって訳じゃないけど、」
「じゃあ、黙って一緒に居ろよ」

この俺様め…!せっかく人が心配して普段全く遣わない気を遣ったっていうのに。まあ、それでも一緒に居られるのは嬉しいんだけども。でも一緒に居たって私がグリーンに何か出来るって訳じゃないし、それこそグリーンの負担にしかなってないんじゃないかと思ったりする訳で。

「…あのねグリーン。私はグリーンが人一倍頑張り屋さんだって事は知ってるつもり。…だけど、無理はしてほしくないの」

だから心配になるのは当然でしょ?そう伝えるとグリーンはほんの少し目を丸くしてから頭をかき、罰が悪そうな表情を見せる。グリーンが過労死なんて絶対に嫌だからね、と漏らせば苦笑を返された。いやでもホントに、グリーンだったら過労死とかしそうで笑えない気がする。ああでもこの人は、自分の限界を解りきってるからその前にちゃんと身体を休めたりするんだろうな。だからきっと無理なんてしない。そう解ってるんだけど、衰弱しきった彼の姿を見たらやっぱり心配はしてしまう。そんなグリーンが見せた罰が悪そうな表情は、私に余計な心配をかけている事へのものなんだろう。

俺とした事が余計な心配をかけるなんて、とか無駄にイケメン気取ろうとしてるんだろうけど、心配くらいさせてよね。私は貴方の彼女なんだから。

「…変な気とか遣うなよ、**」
「変な気とか失礼な。こういう時くらい遣わせてよ」
「だから、いいんだよ。俺がこうしたいんだからこうさせとけっての」
「…私と一緒に居て余計に疲れても知らないよ?」
「…ったく、ホントに解ってねえよな**は。」
「え?今なんて言ったの?」

よく聞き取れなかったグリーンの呆れたような声に身を乗り出したその時、腕を掴まれそのままグリーンの方へと引き寄せられた。
グリーンにダイブした私の身体はベッドに沈んで、グリーンの心地好い体温に身も心も包まれる。
少し早くなる私の心音。グリーンの少し早い鼓動を耳にしたら、もっとドクリとうるさくなった。

「…何の為に会いに来たと思ってんだよ。癒されにきたんだろ**に」

耳元で囁かれたそれは吐息と混ざってくすぐったくて、ピクリと動く私の身体を抱きしめるグリーンの腕の力がきゅっと強くなる。こうして密着する度にうるさくなる心音、私の心臓はいつか壊れてしまうんじゃないだろうかと少し心配になる。

「…グリーン、癒されてるの?」
「…おー。**からはなんか出てんだよな、」
「マイナスイオン的な?っていうか癒しの波動?」
「あーそれそれ、そんな感じだな」
「そんなの覚えた覚えないけど」
「…別に何かしてくれなくてもいい、一緒に居るだけでいいんだよ」
「…それだけで、いいの?」
「……**は俺の、かいふくのくすりみたいなもんだから、」

何もしなくても、一緒に居るだけでいい。少しばかり疲労感が含まれた掠れ気味の弱々しい声色で囁かれたそれに、ジリッと熱くなる身体、ほんのり赤みを帯びる頬。
恥ずかしさに耐え切れなくなって顔を逸らそうとしたそれは叶わず、一瞬にして無駄に整った顔を目の前に感じたと思ったら唇に触れたのは独特の柔らかさを持つあの感触。
独特な柔らかさを感じたのはほんの一瞬で、頭が真っ白になってしまいそうなほどの深い深い口付けの後、ゆっくりと唇を離しながらわざとらしく立てられたちゅっというリップ音に更に恥ずかしさを増す。

恥ずかしいのに、離れたそれが何だか名残惜しい。

「…ふはっ、**その顔すっげえそそる。もっとしてほしいのか?」
「違っ…!もうやだ!グリーンとかくたばればいい!」
「ホントにいいのか?くたばっても」
「よくないけどっ!」
「、**ってホント可愛いよな」

意地悪な笑みを浮かべてくつくつと笑うグリーンは、疲労感を漂わせることなく普段のそれと同じ。かいふくのくすりとか癒しの波動とか、全く私の柄じゃないのにグリーンはそう感じてるらしい。何とも言えないくすぐったい恥ずかしさを感じながらも、ゆるゆると緩んでしまう頬。

「…なあ、**」
「、なに?」
「今日は**に思う存分癒されに来てんだから、覚悟しとけよ」

…覚悟って、何考えてんのコイツ。


その薬、効果は抜群だ!
(…グリーンくんどこ触ってんの)
(胸だろ、どう考えても)
(なんで触ってんの)
(や、だから癒されようと思って)
(もう黙れ変態)



本来の嫁グリーンはただのエロい人です。皆騙されたらダメだよ!と、嫁グリーンの生みの親であるるみちゃんが言ってました。




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