とある寒い日のこと。
ジムの仕事を終わらせ家に帰ろうと裏口から外に出たら、白い雪が積もっていた。街の子どもたちがポケモンと一緒に雪だるまを作ったりかまくらを作ったりととても微笑ましい光景だが、俺は一刻も早く家に帰りたい。

何故なら俺は寒さにめっぽう弱いからだ。

それを知ってか知らずか、足早に帰ろうとする俺の足を一本の電話が止める。ちょうど良いタイミングだ。家に**を呼んであったまろうなんて思ってたのに、この電話に出たことを少し後悔した。

「グリーン!」
「おう。なあ今ジム閉めたん「外、雪降ってるね!」
「……そうだな」
「お?声のトーンが一気に沈んだゾ?」

あったりめーだろ。今からお前が俺に伝えようとしてる事が分かってんだから俺は。つーか人の話を聞けよ。

「俺のことはいい。とりあえず**の用件を聞いてやるから言ってみ?」
「雪だるまーかまくらー!」

ほらきた。**は俺と真逆で寒いのが平気だから、というか精神が子どもと一緒だからか雪を見ると興奮するらしい。普段何事にも冷めている(というか俺に子ども扱いされるのが嫌で俺の前ではそう振る舞っている)**がこうしてキャピキャピしている姿は可愛らしい。

とても可愛らしいのだが。

「ねえグリーン聞いてるの?」
「(お前は人の話聞かねえけどな)おう聞いてるぜ」
「雪だるま!かーまーくーらー!」
「なあ**。今日は寒いし俺の家で鍋パーティーでもやろうぜ、な!」

頼む**、いつもの食い意地を発揮してこれに釣られてくれ。

「おいしそうやろう鍋パ!」
「おっし!じゃあ早速買い出しに「雪だるまとかまくら作ってからね!」
「おおっふ…」



「あー寒いなちきしょー」

真っ白な息を吐きながら、真っ白な雪景色の中で子どもやポケモンたちと一緒に戯れている**を見やる。あーもう何なんだよこの光景は。微笑ましいなちくしょー。

「大丈夫グリーン?ウインディもふってればあったかいよ!」
「言われなくてももうもふってんだよ」
「グリーンてほんと、寒がりだよね!」
「寒いもんは寒いんだよ」
「えへへへへ」
「その笑い方きしょい」
「だってグリーンが優しいから」
「は、何言ってんだよ」
「寒がりなのに一緒に居てくれてさ」

ありがと、グリーン。
雪景色の中で頬をピンクに染めて無邪気に笑う**の真っ直ぐな言葉が妙に照れくさくて、俺が居なきゃ寂しがるのは**だろ、なんて鼻をすすってごまかした。
ジムリーダーとして忙しい日々を送っている俺と会える時間は限られているから、**がしたい事をしようと思っただけで。それだけで。

「グリーン、そろそろ帰ろう」
「もういいのか?」
「うん、グリーンも寒いでしょ?」
「いや、俺のことは気にすん「私が寒いからお家で鍋するの!」
「自由だなお前」

まあでも、逆に俺に申し訳ないから帰るとかだったらふざけんなよってなったけど。

「ねえグリーン」
「なんだよ」
「寒いから手を繋いで帰ろうね!」

そう言って、**はおもむろに俺の手をギュッと掴み指を絡めた。普段は自分からこんなこと恥ずかしくてしやしないクセに、どういう訳かたまーに大胆になりやがる。ついさっきまで冷たい雪を触っていたはずなのに**の手はぽかぽかと暖かくて、体温まで子ども並みだったかと苦笑した。

「…あったけーな」
「グリーンの手は冷たいね」
「そりゃこんな寒空の下にいればな」
「またお外出ようね!」
「俺の話を聞けよ」
「またグリーンの手が冷たくなったら、私がこうやってあっためてあげるからね!」

そう言った**は絡めた指にギュッと力を込めた。こいつ、やってることも言ってることも可愛いんだよちくしょー。外はこんなに寒いのになんで俺の顔はこんなに熱いんだよ。
あれだけ冷たかった俺の手はじわりと汗ばんで、きっと熱くなった俺の体温も**に伝わってるに違いない。



愛しい温もり。
(……っはっくしょいぃー!)
(可愛らしさもなんもねえくしゃみだな。もしかして風邪引いたんじゃねーの?)
(うう…なんか肌寒い…)
(よし、帰ったらあっためてやるよ。俺が)
(やだよグリーン変態だもん)






カントーって四季あるのかな。

あるよねきっと、うん!←




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