「……は?」

思わず間抜けな声が出る。付き合ってるって、俺となまえが?

「いやあいつはただの幼なじみで、」

……で、何だよ。
そもそもなんで俺はご丁寧に答えてやってるんだ。

対するモブは、なぜかほっとしたように息をついて「やっぱりそう、ですよね、よかった」なんて言っている。

訝しげなこちらの視線に気付いたのか、モブは今までおどおどしていたのが嘘のように真剣な目を向けた。

「……僕、なまえさんのことが好きなんです。本気で」

……ふうん。

そういうことか、と納得すると同時に、一気に自分の中の温度が下がるのを感じた。

「なまえより弱い、お前が?」

うっ、とモブが言葉に詰まる。なまえに話しかけられなかった理由のひとつでもあるのだろう。

この世界ではバトルが必要不可欠だ。誰かを守るためであっても、自分を守るためであっても。

しかしモブは力を噛み締めて、ここは譲れないとばかりに言葉を返した。

「強くなって見せます。それに、あ、あなたはどうだって言うんですかっ……」

真剣な瞳で必死に言い返すモブ。本気でなまえを好きという言葉は本当らしい。

無意識に口角を上がり、ニヤリと笑みを返した。

「勝負……してみる?言っとくけど俺強いよ」

だが、容赦はしない。

***

「負けた……」
「ん、七千円な」

がっくりと膝をつくモブに容赦なく頂く。

膝をついたまま弱々しく差し出す金を受け取り、ついでに耳元で一言呟いてやった。

途端にモブは涙目になって、しまいにはうああと泣き叫びながら走っていってしまった。



『俺より弱い奴がなまえに告白とか、有り得ねえから』



あんなこと、本人には口が裂けても言わないが。

ただ、モブの真っ直ぐした真剣な瞳は、俺には出来ないだろうなと漠然と思った。

***

「トウヤ、どうしたの?」
「別に?」
「じゃあなんでそんなにひっついてんの!食べにくいよ」
「……別に」

彼女の強靭な壁は、今なお崩れない。



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るみさんから相互記念にいただいてしまいました…!
トウヤくんマジブラック。素敵すぎる…!




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