「ド派手なイルミネーションとか嫌いなんだよ」

目がちかちかする、と仏頂面をするトウヤを、思いきり笑い飛ばしてやったことがある。
だっていっつもこのイルミネーションの何倍もちかちかするゲームをしているというのに、一体どこが気に食わないのだろうと。

結局そんなトウヤに合わせて、なまえたちは商店街を外れた公園を歩いていた。みんな始まったばかりのイルミネーションを見に行っているから、ここには全然人がいない。聖なる夜が近いこともあり、商店街の方向に明るい光がもれている。

まだ綺麗な雪に、二列の足跡をつけて歩いた。
積もった雪を踏むたびに鳴る音は隣で聞こえるのと同じ音で、ただそれだけのことが嬉しく感じる。

「……ほら」
「え?」
「寒いだろ」

トウヤはこちらを見ずに平然と手を差し出した。戸惑うなまえに構わず手を取ると、自分のそれと組んでコートのポケットに突っ込む。

まるでドラマみたいな行動だったけれど、端正な横顔はとても絵になっていた。

冷たかった手が熱を持つ。

「…ねえトウヤ」
「あー?」

ぎゅうと手を握り、前を向いたまま。

「……すき」

小さく告げると、トウヤは驚いたように立ち止まって、でもすぐにふっと笑った。はにかんで俯く、彼にしては珍しい笑い方。

「なまえ」

言いながらこちらを向いて、ゆっくりと片手を背中に回す。脱力して寄り掛かっている様にも見えるそれは、トウヤが顔を隠すためでも、甘えるためでもあった。

「……俺も」

彼らしい、下手くそな告白。
ぼそぼそと肩で呟くトウヤに、ふっと笑って「うん」と答えるけれど、きっと彼の顔は赤いからしばらく肩に乗った頭を離してはくれないだろう。

ただ、こんな時間をなんとなく、いいなあなんて思って息をはいた。
白い息は空にのぼってすぐに消えた。

「……帰るか、」

照れ隠しだろう、体を少し離しながらどうでもよさ気に言った。トウヤって結構ウブだと思う。
時々さらっととんでもないことをやるから、油断はできないけれど。

「おでん買って帰ろう」
「おー、いいなそれ」

でも人のことを言えた訳ではないから、照れ隠しの会話に付き合うことにする。

私たちは決して素直じゃないから、私たちの関係はいつもふらふらしていて安定しない。

けれど、コートのポケットで繋がれた手は、たしかにここで結ばれているんだと安心させてくれた。

面倒臭がりのトウヤとは会話さえ難しかったけれど、今は違う。
ぽつりと呟いた言葉にも、トウヤはいつも答えてくれた。
たったそれだけのことが、「私だけの特権」と思うだけでこんなにも嬉しい。

なまえは、この関係がとても好きだった。

「……少しだけあったかくなったね」
「……そうだな、」

温もりをくれるトウヤの手が、控えめになまえの手を握った。

コンビニに寄るために公園を抜けて商店街に近付くと、きらきらしたネオンが私たちを照らす。賑やかな曲や人の波がざわざわと聞こえた。

隣では相変わらず「うるせー」なんて顔をしかめているけれど、その頬に熱が灯っているのを、私は知っている。


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なにこのほのぼのきゅんきゅんするトウヤくん。読んでる間はニヤニヤと涎と鼻血が止まらなくてそりゃあ大変だった。←
ありがとうるみちゃん!改めて2000hitおめでとう!




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