ナマエの何処に惹かれたのか、それは自分でもあまりよく解っていない。ナマエは奈良家のシカマル以上に極度な面倒臭がり屋だし口は悪いし、素直とも言えない性格で、もちろん愛嬌というものは無い。テマリの影響か、ここ最近は面倒臭がり屋な性格にキツイ性格がプラスされてきている。かわいい、とは程遠い。それでもナマエと一緒に居るのは何故だか落ち着くし、不思議な安心感があるし、なんだかんだ優しい所があると知っているから。
*
「がーら、コレ食べる?」 「ああ、」 「ん、じゃあはい」 「………、」 「なにその目は。無言で訴えるのはやめていただきたい」 「皮をむいて食べさせろ」 「なんで上から目線なの」 「風影だからな」 「関係ねえよ。っていうか自分で食え。アンタのその手は飾りかなんかなの?」 「俺の手は今チャクラを練ることに忙しいんだ」 「や、なんで部屋の中でチャクラ練ってんだ。チャクラの無駄遣いすんな」
そう言うナマエの手の中には蜜柑がおさまっていて、その表情は眉間にシワを寄せひどく面倒臭そうにしているが蜜柑を持った手はせかせかと動いている。面倒臭そうにしながらもちゃんと皮をむいてくれるナマエは、やはりなんだかんだ優しいのだと思う。 ふとナマエの手元を見てみればご丁寧に白い筋までキレイに取ってくれている。 ナマエはそれを一粒俺の口へと放り投げた。
この蜜柑甘いな。
「うまいな、」 「私が皮むいたんだから美味しいに決まってるでしょ」 「そうだな、」 「蜜柑ってなんでこんな白い筋ついてんのかなー…ああもう面倒臭いっ」
ナマエの眉間に寄せられたシワが更に深くなっていく。よほど面倒臭いのだろう、だがそこまでして白い筋をキレイに取る理由が俺には解らない。それでも白い筋をキレイに取っていくナマエの手は止まることを知らない。取るのがそんなにも面倒臭いならそのままでいいのに。
「がーら、まだ食べる?」 「ああ」 「ん、」 「…ナマエ、」 「なーに?」 「そんなに面倒臭いなら、その白い筋は取らなくてもいいんじゃないのか」 「…………、」
ナマエは一瞬ピタリと手を止めてから少し目を丸くさせる。それから少し頬を赤くさせて顔を俯かせた。
「っだ、だだだってがーらの為だって思ったら手が勝手に動いちゃうんだよっ!」
ナマエが吃りながら早口になるのは照れている時の癖。前言撤回。何処の誰だ、ナマエがかわいいとは程遠いなんて言った奴は。いや俺か。どうやら俺は今さらながらナマエの愛情に気付いたようだ。
ああ、全くコイツは、
(どうしようもないくらいかわいい奴だ。)
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