「さーむーいー!」
「そーだな」
ほれ、とグリーンは珈琲を口に運びながら、エアコンのリモコンを私に差し出した。
設定温度を上げろってことか。
確かにそうすれば暖かくなるんだろうけど、私が求めてるのはそうじゃなくてね。
分かってないな、グリーン。
「そうじゃなくてさー…」
「なんだよ?寒いんだろ?」
「うん、寒い。超寒い」
「だから、暖房」
「…ダメだねグリーンくんは。もっと精進しなよ」
「はあ?」
怪訝そうな表情をしたそのすぐ後に、グリーンは何かを思い付いたような表情を見せる。
「…軽く運動でもするか?」
ニヤッとした意地悪そうな笑みを浮かべるグリーンに、私は正直引いた。
「…グリーン、いやらしい」
「お前だろそれは。運動のどこがいやらしいんだよ」
「…だって、運動でしょ?」
「お前はどんな運動を想像してんだよ」
はぁ、と呆れたようにため息をつくグリーン。
あ、あれ?本気で運動する気だったのかな。だってグリーンの口から出る「運動」とか、それ以外思い付かないでしょうよ。
「グリーン寒い」
「だから暖房」
「寒い寒い寒い寒い!」
「…身体使って暖めるか?」
「そういうのは求めてない」
「ちっ」
舌打ちってちょっと。
やっぱりグリーンしたかったんじゃん。いやらしい。
「あのねグリーン。私が寒いのは身体じゃなくて心なの」
「…そうですか」
「そうなんです。だからね、」
こうすれば暖かくなると思う、とグリーンにガバッと抱き着けば、グリーンの口からは「うわっ!」という声が降ってきた。
「…お前な、」
「なに?文句あるの?」
「ねーよそんなもん。畜生かわいいなお前」
「グリーン暖かいねー」
「聞けよ人の話」
抱きしめる力をぎゅうっと強くすれば、グリーンもそれに返すように私を抱きしめる力をぎゅうっと強くした。
まあ、そのまま押し倒されてしまった訳だけど。
人肌恋しい季節です