××と繋いだ手はあったかい。××と過ごす時間はなんて言ったらいいのかわからないけど、すごく心地好くて落ち着く。夜叉丸と過ごしている時間と似ているようで、なにかが、違う。
砂隠れの里に居るとき僕の傍には夜叉丸が居てくれた。化け物が暴れて里のみんなを傷付けてしまったときは、幾度となく夜叉丸が傷付きながら僕を止めてくれた。"化け物である僕"を受け入れて傍に居てくれた夜叉丸、××は僕を受け入れてくれたけど"化け物である僕"を知らない。ココでは化け物の力を知る術がないから。もし××が本当の僕を知ってしまったら…そんな不安はあるけれど××は言ってくれたから。こんな僕に「大丈夫」だと言って笑いかけてくれたから。根拠はどこにもないけど××がそう言ってくれたから、僕は××のその言葉を信じた。

信じたいと思った。

…ねえ信じるから、僕は××を信じてるから、

だからこの手を離さないで。



××に手を引かれながら歩いていると、砂隠れの里では見たことがないような大きな建物の前にたどり着いた。
ココで目に映る物のほとんどが見たことのない物ばかりで、僕の目は色んな物に惹かれていく。あれはなに?と××に聞けば××は笑顔でひとつひとつ教えてくれる。××が笑顔で応えてくれることが嬉しくて、色んなことを××に聞いた。こっちだよ、と××に手を引かれてたどり着いた先にはたくさんの服が置かれていた。たくさんの服も気になったけど、それ以上に目が離せなかったのは僕くらいの女の子と、女の人。それは砂隠れの里でもよく見た光景なのに、その光景を眺めていたらなんだか胸がぎゅうっと苦しくなって視界がぼんやりと歪んできた。
あんな風に誰かと笑い合うことができたら、どれだけ嬉しいだろう。どれだけ素敵だろう。ふいに××と繋がれた手に力が込められて××を見れば、僕に優しく笑いかけてくれる××と視線がぶつかる。

「見て見て我愛羅くん。あの服我愛羅くんに似合いそう」
「、っ、」
「…ねえ我愛羅くん、今日は私を我愛羅くんのお母さんだと思ってね。お姉さん、息子の為なら何だってしちゃいます!」
「……っ、うんっ、」

どうして××は僕がしてほしいことをしてくれるんだろう。どうして言ってほしいことを言ってくれるんだろう。ぼんやりと歪んでいた景色はきれいになった。手を繋いでない方の手で××に気付かれないようにごしごしと目をこする。…もし、もし母さまが生きていたら、僕の傍に居てくれていたら、××みたいにこんな風に笑いかけてくれたんだろうか。こうして手を繋いでくれたんだろうか。顔しか知らない母さまの姿を××の姿と重ねる。××は本当にあったかい人、夜叉丸とは違うけど一緒に居るとどこか安心できる人。もっともっと、××を知りたい。もっともっと、××と笑い合いたい。

もっと、もっと。××と一緒の時間を過ごしたい。


(できることなら、このまま、ずっと。)




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