※アル×ジュ
※学パロ



遅い。遅い遅い寒い遅い。
空はまばらに星が輝く群青色。ケータイのディスプレイに表示された文字は八時過ぎを示している。俺が仕事を終えて職員室を出たのが七時頃だから、あれからもう一時間は経っている。
いらだって振り上げた拳を適当に落とすと、理不尽にも内側から殴られた俺の車がクラクションという悲鳴をあげた。

「アルヴィン!」

ちょうどその時だ。外から、待ち人の焦ったような声とパタパタという軽い足音が聞こえてきた。
助手席のドアを開けると転がるように車に乗り込んだジュードは、その勢いのまま俺の首の飛びついてきた。

「どうしたジュードくん。やけに甘えん坊だな」
「遅くなってごめんね、アルヴィン」
「その埋め合わせのために抱きついてんの?」
「違うよ」

今日は花の金曜日。
いつもは校長のローエンにからかわれるからしないけど、毎週の今日だけは特別にジュードと一緒に帰る。という名目で、俺の車で、教師と生徒なんていう肩書きは忘れてドライブに繰り出す。思いきりいちゃつけない平日の分を取り戻すように。
そんな貴重な時間を、ジュードはいったいどこで一時間もつぶしていたのだろうか。
まあ、大方予想はつくが。

「今まで何してたんだ?」

腕を解いてシートにおさまったジュードに問いかけると、ジュードは申し訳なさそうに事の顛末をぽつぽつと話し始めた。
昇降口で踞る人影があったこと。心配になって声をかけると、その人はこの学校の女子生徒で、どうやら大切なものを落としてしまったらいしこと。そこまで聞けば後は分かる。
この青少年はやはりそのお人好しを遺憾なく発揮していたようだ。
アクセルを踏んで、暖房をオンにする。
ジュードの頬と鼻先は冬近い冷気で真っ赤になっていた。それからきっと指先も。
校門を抜けて市街地に入ると、ハロウィンからクリスマスへあっという間に衣替えしたネオンが楽しげにチカチカ光っていた。世間の移り変わりの早さには、毎年のこととは言え驚かされる。

「そう言えばね」
「うん?」
「指輪だったんだ。探し物」

そこらの雑貨屋に売っているうような、安物とは言わないがけして高価とは言えない、指輪。宝石も飾りもなく、二人のイニシャルが彫られている訳でもない、シンプルなピンクゴールドの。その女子生徒を迎えにきた男の子とお揃いの、指輪。
過ぎ行くイルミネーションを見つめる琥珀色の眼がうっとりするように細められた。

「おねだりが上手いな、ジュードくんは」
「え?」
「いいや。なんでもない」

ひときわ目立って輝くのは、プレゼントをばらまくサンタの電球たち。
だが、サンタクロースに代わって指輪をプレゼントするには時期尚早ってもんだ。
今進んでいる道を真っすぐ行けばやがてジュードの家に着く。だけど、今日は。
本屋のある交差点で左折すると、隣から困惑の声があがった。目的地をどこか分かっているからこその声。
向かうのは俺の家だ。

「なあ青少年。勉強教えてやるからさ、今日中にさっさと宿題終わらせちまおう」
「いいけど…どうして?」

コテンと首を傾げる青少年。かわいいねぇ。
こんな仕草で、丸い瞳で、おねだりなんかされたら耐えられる訳がない。
だけど真面目なジュードくんはきっとやるべき勉強をやりきるまでノってはくれないから。

「おたくが物欲しそうな顔してるから」

赤信号で停止したその隙に無防備な耳に唇を寄せれば、一瞬で赤く染まる首筋から耳たぶまで。寒さで冷えてしまったのではなく。
そんな顔してないもん、なんて尖らせた口にフライングでキスを落とす。
ああ、今日が花の金曜日で良かった! 夜は長くなりそうである。


してね

----------
10万打記念フリリク企画にて、リリィ様からリクエスト頂きました「アル×ジュで学パロ」でした。
リクエストありがとうございました!

あんまり学校要素なくてどちらかと言うとただの現パロになってしまいましたが…。
こんなもので良ければ、煮るなり焼くなり好きにしてやってくださいっ。

改めて、ありがとうございました^^*

※リリィ様ご本人のみお持ち帰り可です


[][]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -