※サンゾロ



けっして折れることのない鋼鉄の心は、しかし、激しい嫉妬の炎にはどろどろに融かされてしまうようだ。
突き出された唇に自分のそれを重ねようとするとぷいとそっぽを向かれてしまった。彼が不機嫌な証。
しょうがねェなあと苦笑すると、ゾロは何がだと不満を全面に押し出して噛みついてきた。いや、リアルに噛みつかれた訳ではない。ないけれども、ともすれば本当に喉元を噛みちぎられそうな鋭い殺気を伴う眼光はさすが東の海の魔獣とでも言うべきか。

「あのな、この際だから言わせてもらうが、普段そんな顔してェのはおれの方なんだからな」
「そんなってどんなだよ」
「拗ねた顔」
「別に拗ねてねェ」

拗ねてんじゃん。と続けようかと思ったが、それに返ってくる言葉は分かってる。それでは埒があかないどころかケンカに発展しかねないのでこちらが折れてやることにした。おれって優しい!

「テメェが嫉妬してんのは分かってんだよ」
「嫉妬なんかしてねェ」

バカなのかこいつは。知ってたけど。
ついさっきと同じ展開が繰り広げられるのが容易に想像できて、思わずため息を吐いた。

「分かった。仮にテメェが嫉妬してないとしてだな」
「仮じゃねェ」
「おれはいつもナミさんやロビンちゃんやチョッパーにあまいテメェを見て、やきもきしてるんだよ」

だから、こんな風に一方的におれが悪いみたいな、避けるような真似をされるなんてたまったもんじゃない。おれがやきもきしてもなんとかそれを我慢してきたように、お前も寛大な心でおれの女性に対する奉仕を許せよ! だいたいそこにレディがいたらご奉仕するのは男として当然のことだろうが!
この口もきいてもらえないケンカも出来ない目も合わせてもらえない寂しい三日間。おれがどんな気持ちで過ごしてきたと思ってるんだこの野郎。
ゾロから向けられるのに負けないくらい恨みがましい熱視線で睨み返すと、ゾロはなぜか急に口角をいびつに持ち上げた。

「…なんだよ」
「いや…。お前今すっげー変な顔してるぜ」
「うるせー!」

どろどろになっていたはずの鋼鉄の心はどうやらいつの間にか常の強さを取り戻したらしい。機嫌をなおしたらなおしたでかわいくない奴め。
が、しかし。

「なっ…!」

クソ正直じゃない唇を掠めれば、瞬時に真っ赤にそまる顔。また、今までとは違う炎でどろどろに融けていく鋼。

「ナミさんたちに嫉妬なんかしなくても、おれにこんな情けねぇ顔させられんのはテメェだけだバーカ」

その代わり、ゾロの心を蕩けさせられるのも、おれだけって決まってる。
寂しかった三日分を取り戻すように、今度は掠めるだけじゃなく唇を重ねる。
半ば強引に搦めとった舌が緩慢にでも応えてくれる、それだけで優越感を得られるおれの心はおそらくとっくの昔に原型も留めないほどに蕩けているに違いない。


僕らにてるやつなんてきっといない

----------
萪邨みかん様より84000打キリリク「サンゾロ」でした。
キリ番ゲットおめでとうございましたそしてリクエストありがとうございました!
大変お待たせしてしまってすみません…

うちのサンゾロをかわいいと言ってくださったのでかわいいのを目指したのですが…かわいい……?
気に入っていただければ幸いです…!

改めてリクエストありがとうございました^^*

※萪邨みかん様のみお持ち帰り可です


[][]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -