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知念くんの予想通り雨は降らず、しかし晴れすぎもせず、少し蒸し暑いなか体育祭の当日を迎えた。
午前の部で、知念くんは棒倒しに出ていた。 棒倒しは大抵誰かしら怪我するほど危ない競技だから、知念くんが怪我しないかハラハラしながら見ていたが、 うちのクラスと1組の合同チームは全員無事で優勝。 私は綱引きに出て二位。 午後の部では、クラス全員が出場するムカデ競争でこちらも二位(ちなみに知念くんは、当然のごとくムカデの一番後ろだった)。 他の競技も含め、ここまでなかなかの好成績だ。
結局、知念くんの言ってた“かなさん”の意味は分からないまま。 おばあちゃんとか友達とかに聞いてみればいいんだけど、何だか聞くのが怖かった。 それに、ちゃんと知念くんから聞きたかった。
そうこうしているうちに、残す競技はあと一つ、クラス対抗リレーだけになった。 グラウンドに入り、リレーメンバー四人で「ちばるやっさー!」とお互い声を掛け合って、それぞれの位置につく。 一瞬知念くんと目が合ったので笑いかけると、知念くんも口の端をニッと上げて、私と反対側のスタート位置に走っていった。 その後ろ姿を見ながら、「よしっ」と気合を入れる。
一年生、二年生と走り終わり、遂に最後、三年生の番。 スタートラインに立って、集中する。 大会のときでもそれほど緊張する質ではないはずなのに、いつもより心臓の音が煩く聞こえる気がする。 久しぶりのリレーだからか、それとも… ピストルの音が響き、第一走者たちが一斉にスタートした。
「(速い!)」
同じのクラスの山城さんは、半分の地点までに他の走者と差をつけ、先頭でコーナーを通過した。 私がインコーナーに移動するとすぐ、一位のまま山城さんがテイクオーバーゾーンに入ってくる。 私は片腕を後ろに差し出し、軽く走り出した。
「(…一位のまま、知念くんに繋ぐ!)」
そして右手に感じる、バトンの感触。 私はバトンをしっかりと掴むと、地面を勢いよく蹴った。
***
風のように走り出した彼女の姿を目に焼き付ける。 終わったら、何もかも伝えよう。
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