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「ミョウジさん!!!」
昇降口で靴を履きかえていると、後ろから知念くんの声がした。 振り返ると、困ったような表情をした彼が、こっちに走ってきていた。
「(どうしよう…どんな顔して話せば……)」
顔をあわせづらくて、視線は自然と下の方へ。 少し離れたところで、知念くんが立ち止まる気配がした。
「わっさいやー、凛と裕次郎が変なこと言って……。わったー、煩かったかやぁ…?」 「う、ううん、別に…だいじょぶ……」
知念くんの顔をまともに見ることもできず、俯いたまま彼の質問に答える。 目の奥が、じん、としてきた。
「………さっき、」
自分の足元にひたすら視線を落としていると、いつの間に近くに来たのか、私の頭上から知念くんの声がした。
「席が隣なだけって言ったけど……ホントは違うさぁー…」 「え…?」
彼の言葉に思わず顔を上げると、射抜くように鋭く真剣な視線とぶつかった。 目を逸らせることが、できない。
「わん、ミョウジさんと仲良くなれて、でーじ嬉しかった……ただ隣なだけだなんて思ってないさぁー」
彼の言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「(それってつまり、どうでもいい奴だとは思ってないってこと…だよね?)」
緊張で固まっていた顔の筋肉が緩んでいく。
「そっか……よかった…」
彼に嫌われてない。どうでもいいって思われてない。 それが分かっただけで、こんなにも安心する。
「ミョウジさん、家どの辺なんばぁ?」 「えっと、首里城の方の…儀保駅の近くだけど」 「あの………わんも途中までそっちの方なんやしが、一緒に帰らん…?」 「え、でもテニス部の人たちは…」 「あー……まぁいいさぁー。あったーとは毎日部活やって一緒に帰ってるんやっし」
そう言って、にっ、と笑った彼につられて、私も思わず顔が綻んだ。
***
「知念のやつ、今ごろ告ってっかやー?」 「いや…あの様子だと、まだ無理でしょうね」 「じゅんに?あったー明らか両想いなのにやー…」 「知念くんは結構奥手ですからね。軟派な平古場くんと違って」 「ひどっ!」
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