おとといあたりからだろうか。どうもナマエの機嫌が悪い。
ヒドラやバッキーとの戦いの後に帰ってきた僕にナマエが泣きながら抱き着き、愛してると何度も言ってくれたのが数日前のこと。
その日や次の日は、僕にべったりくっついて離れない以外は普通の様子だったはず。
僕がなにかしてしまったんだろうか。
この数日間の自分の行動を振り返ってみても、思い当たる節が何一つない。
リビングのソファに座りながら考え込んでいると、ナマエがやってきて僕の隣に静かに腰かけた。
彼女の顔を見るとその表情はあまりに険しく、眉間にシワを寄せて睨み付けてくるものだから、僕は思わず背筋を正して硬直した。
「スティーブ」
「う、うん?」
「わたしに何か、言うことあるんじゃないの?」
「え…」
「……分からないの?」
「えっと……うん、ごめん…」
「っ……スティーブのばか!!もう知らない!!」
「えっ、ナマエ?!」
ナマエは勢いよく立ち上がり、寝室に駆け込みバタンと大きな音をたててドアを閉めた。
続いて、カチャリと鍵をかける音がする。
なにがなんだか訳が分からず茫然とその様子を見つめていたが、ハッと我に返るとすぐに寝室の前に向かった。
しっかりと閉じられてしまったドアを前にして、不安な気持ちが込み上げてくる。
「ナマエ、ドアを開けてくれ」
反応はない。それどころか、物音ひとつしない。
「ナマエ……僕が気付かないうちにきみを傷つけてしまったなら謝る。でも僕はバカだから、その理由が分からないんだ……」
少しして、ドアの向こうにナマエがやってくる気配を感じた。
「すまないナマエ……僕はどうしたらいい…?」
両手と額をドアにつけて、小声でつぶやく。
このままナマエに愛想を尽かされてしまったらと思うと……。
「……本当はね、わかってる」
ドアの向こうから聞こえてくる、ナマエの小さな声。
僕は一言も聞き逃さないように、静かに耳を澄ませた。
「わかってるの、スティーブが大変だったこと。だからこうして無事にいてくれてるだけでも、わたしは喜ばなきゃいけないのに、でも……」
「ナマエ…?」
「でもわたし、わがままだから…」
ナマエの声がだんだんと、嗚咽交じりになっていく。
泣かせてしまったという罪悪感と、いまだに何のことか分からず困惑する気持ちで、僕の頭は混乱した。
しかし次にナマエが放った言葉で、僕は一瞬にして目の前が真っ白になった。
「スティーブ、どうしてキス、してたの……あの人は誰…?」
そうだ。
ヒドラに追われた僕とナターシャは、敵の目を欺くために、ショッピングモールで咄嗟に……。
ああ、僕は最低だ。
あのあと色々なことがありすぎて、すっかり忘れていた。
そもそも、あの現場にナマエがいたなんて….。
あの時の状況を話し、決して浮気はしていない、本当に申し訳ないと思っている、と必死に説明するも、ナマエはドアを開けてくれない。
ああもう、本当にどうしたらいいんだ……こんなことでナマエを失いたくなんかないのに…!
僕はぎゅっとこぶしを握ると、目の前のドアとその向こうにいるであろうナマエに向かって、しっかりと言葉を放った。
「ナマエ、僕を信じてくれ。僕はきみを誰より愛してる。他の女性なんて目に入らないくらい。僕にはきみしかいないんだ。だから……だから僕は、どうしたらいい?どうしたら、きみに許してもらえる…?」
少しの間の後、鍵の開く音に続いてドアが少しだけ開かれ、目を真っ赤にして泣いているナマエの姿が現れた。
「……どうしたらいいと思う?」
その言葉を聞くや否や、僕はドアを押して勢いよく開け、ナマエの唇にかぶりつくようにキスをした。
ナマエの頭と腰を抱いて、逃がさないように。
そのままベッドへもつれるように沈みこむ、僕とナマエの体。
「ナマエ、愛してる、愛してるよ…」
「スティーブ…」
再び涙の溢れだしたナマエの目元に唇をよせ、雫を舌で舐めとる。
もう二度と、ナマエをそんな不安な気持ちにはさせない。
そう心の中で誓いながら、僕は朝が来るまでナマエを離さなかった。
きみだけだから
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ぱんけーき様、リクエストありがとうございます!遅くなってしまって申し訳ありません! 嫉妬夢というより喧嘩夢のような感じになってしまいましたが、こんな感じでいかがでしょうか…? こんな駄文で申し訳ありませんが、少しでも楽しんで頂けたらと思います…! 改めまして、この度はありがとうございました!
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