神社
自らが神主を務める神社の階段を登っていると、柏手を打つ音が聞こえた。
珍しく神社に人がいるらしい。
参拝者のものとおぼしき声も聞こえてきて、そこに居るのは知人であることを中禅寺は知った。石段をあがる自分の足が急に重たくなるのを感じる。
あの二人か……。
「益田くん、礼が多いよ。最後は一回で良いんだよ」
「え〜青木さん、礼が多くて怒られるなんてことがあるんですか。僕が祀られてる側だったら、多ければ多い程嬉しいですけどね。よしよし、可愛い奴め、ってなもんですよ」
「違うね。僕が祀られてる側で、目の前にある説明書きも読まずに頼みごとなんかされたら、『そうやって周りが見えてないから駄目なんだ』という意味もこめて、その人の頼みごとは無視してやるよ。あえて」
「器ちっちゃ!青木さん、それはあまりにも器が小さいですよ」
「願いは全て聞いて貰って当たり前だと思っている君の方が、器は小さいよ。大体、礼の多さで喜んでるようじゃ、君は賽銭の額で贔屓をしそうだ。おぉ100円か!よしよし、可愛い奴め、だっけ?あ〜浅ましいね。嫌だね、そんな神様」
「何を言うんですか!神社だってお金がなければ補修も出来ないんですよ!」
―――いやそこは「さすがに金で贔屓はしない」と言えよ、益田くん。贔屓する気満々じゃないか。
中禅寺は心の中で突っ込んだ。
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