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どうなってもいいならおいで

いつも通りの居酒屋で、いつも通り益田と鳥口の二人と自分の三人で飲む。

そうして色んなことを話す中で、青木を見る益田の瞳に熱がはらむのを見つける。深く息を吸い、瞼を震わせる姿も。本人はいたって真面目に隠しきっているつもりらしい。青木は素知らぬふりをして返すので、その勘違いをただすことも出来ない。

そのうち益田は泣きそうな顔をして限界以上の酒を煽って潰れてしまう。

いつも通りの光景。

そして、いつも通りに青木は益田を背負って下宿へと送り届ける。

だがその日の帰り際は少しだけ違った。店を出て別の方向へと帰る鳥口に、益田を背負いながら「じゃあね」か何か言うと鳥口が重々しそうに口を開いたのだ。

「青木さん、いい加減気付いてるでしょう。いつまで知らないフリをするんすか」
「僕はね、鳥口くん。益田くんは考え直してみるべきだと思うんだよ」

いつもは静観している鳥口が、ついに堪えきれぬように吐いた言葉を笑ってかわすと、理解出来ぬとでも言いたげに首を振られた。

「…てっきり青木さんも好きなんだと思ってましたよ」
「好きだよ。だからこそ考え直して欲しいんだ」

それだけをはっきりと伝えて別れた。

なにも、手にいれようと動くことだけが想いの証明ではないはずだ。

どれだけ青木が益田を独占したいと思っているのかを知れば益田はきっと驚く。自分の元から離れたくなるかもしれない。そのときに後悔しても遅いのだ。一度手に入れたなら、青木には手放す気などさらさらない。

ずり落ちそうになった益田を背負い直す。その振動で僅かに意識が浮上したらしい益田の腕が青木の肩へとまわってくる。

すがりつくような仕草に笑みがこぼれた。

――何度も何度も考えて。それでもまだ僕を好きだと思ってくれるなら。

そのときはもう容赦はしない。

歩くペースを落とす。もう少し背中の重みを感じていたかった。首もとに益田のさらりとした髪があたってくすぐったい。

次は正面からこの髪を感じることができるといい。

そんなことを考えながら、暗く細い道をゆっくりと歩いた。

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タイトルは「彼女の為に泣いた」様からお借りしました。


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