Eyes of the stuffed toy



「ミラー、お前にプレゼントがあるんだ」


そう言い、見せるようにして可愛らしいウサギのぬいぐるみを抱き抱えているのは、俺の親友である地獄のタクシー。


先程、背中に手を遣り何やらごそごそしていたのは、このぬいぐるみを隠していたからのようだ。




親友は、どうだ、可愛いだろ?なんて言いながらぬいぐるみと見つめ合っている。女子か。




「は・・・呆れた。男にンなもんプレゼントするか?俺は女じゃねぇんだぞ」




「嗚呼、確かに。・・・気に入らなかったなら、仕方ないな」


いつも通りへらりと笑う親友。それでも、無理をして笑っているのは、誰が見ても分かる程。







――まずい。

コイツは、“ネガティブモード”に入ると面倒臭い。



ネガティブモードというのはその名の通り。消極的になって、何事もマイナスにしか考えられなくなるというアレだ。


以前ネガティブモードに入った親友は、本当に、本当に面倒だった。


なので、あのような事態は出来るだけ避けたいのだ。











とりあえず、受け取ってやらないと。


というか、せっかく自分へのプレゼントを選んで買ってきてくれたのに、受け取らない訳ないだろ。












「勝手に勘違いすんな。・・・貰わないとは、言ってねぇ」


「・・・え。」


親友が、顔を上げて不思議そうに見つめてくる。





「だから、貰ってやるって言ってんだ。解れよ馬鹿。」








ああ、もう。何で、俺はこういう言い方しかできないんだ。もっと素直になれないのか、と。自己嫌悪に陥る。

一方で、そんな事など気にもせず。ただ貰ってやると言っただけなのに、嬉しそうにぬいぐるみに話しかけている俺の親友。




「良かったな、ウサギ丸。鏡のお兄さんが、お前を貰ってくれるって」








時々俺は、コイツの事が、心配になる。


あの歳になってぬいぐるみに話しかける男など、普通ならば居ないだろう。



コイツとの付き合いは割と長めだが、未だによくわからない奴だ。






(それと、ウサギ丸って。お前のネーミングセンスを疑うぜ、タクシー・・・)





























思う事は色々ある。

だが、そんな事より、今は。







親友から、ウサギのぬいぐるみを受け取る。



改めて近くで見てみると、結構可愛い。そう思ってしまった俺は、女々しいのだろうか。










(・・・コイツからのプレゼント)




















俺は、先程親友がしていたように、

ぎゅ、と。



ぬいぐるみを抱きしめてみた。










(これ、ウサギ丸っていうのか?)


(そう。)


(ふうん。有り難う、タクシー。)


(どういたしまして。)






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