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トキヤが、わらってた



俺以外の前で



トキヤが、








トキヤはあまり笑ったりしない、言ってみればストイックな奴だ


と、思ってた


きっとそれは俺の前だけだったんだろう





昼間に翔やレン達と会話していたトキヤの表情

俺の聞いたことのない低い笑い声


脳裏に焼き付いて離れない






部屋に戻り、俺はベッドに倒れ込んだ


もう片方のベッドではトキヤがぼんやりとコーヒーを啜っていた




「ねえ、」


「」


「ねえ、トキヤ」


「……なんです、音也」





いつもと変わらないぶっきらぼうな返事

それが今日は


今日だけは


異常に腹立たしく感じられた




「ねえ、お前なんなの」

「はあ?」




何が言いたいんだ、という表情でトキヤがこちらを見ている




俺は徐に立ち上がり、ベッドに座るトキヤを押し倒した




トキヤの持っていたカップが手から滑り落ち、床にぶつかり鈍い音をたてる




「お前さ、俺のこと嫌いなんだろ」


違う


「俺の前で笑わないじゃん」


違う


「嫌いだったら部屋変わってもいいんだぜ」


トキヤの表情が段々歪んでいく


違う


違うんだよ


俺は


お前が好きで


でもお前は俺のことどう思ってるかなんて分かんなくて


それでも俺はお前が好きで







零れたコーヒーの香りが充満する静寂の中、トキヤが口を開く







「……じゃない」







その瞬間、トキヤの深い色の目から涙が流れ始めた


「私、嫌いじゃないです」


「音也のこと」


「いつもうるさくて、落ち着きのない音也」


「どうしてかわからないです」


「私が音也にこんな気持ちを抱いてることを知られたら」


「きっと音也は私を嫌いになると思ったんです」


涙をぽろぽろと流しながら、俺の下で泣くトキヤ





「………お仕置きだ」









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