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呼吸を整えてドアを開ける



「お、苗字だ」


山本が自分の机に腰掛けながら微笑んだ


「沢田が、山本が呼んでるって…」


「うん、ごめんな、呼びたしちまって」


山本は立ち上がって私に向かって歩き出した

私は自分の心臓のおとが山本に聞こえてしまわないか心配するほど緊張していた



「苗字には伝えておきたかったんだ」



「…私も、山本に言いたいことあった」



私がそう言うと、山本は一瞬驚いて、最近見せていたあの辛そうな顔をした




















「俺さ、イタリアに 行くことにしたんだ」























時が、止まった気がした













「え…?」




声が掠れてうまく話せない




「イタリアでやらなきゃいけないことがあるんだ…」



「そ、そうなんだ…
いつ、帰ってくるの?」




「わかんねぇ…」




「……」



「苗字は?俺に言いたいことってなんだ?」






そんなの、わかってるくせに








だめ、泣くな、泣くな泣くな…!













「達者でやれよ って言いたかったの…!」








伝えては、いけないような




そんな気がした













「…うん、苗字も元気でやれよ!」





そう言うと山本はヘタクソな笑顔で笑った















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