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土砂降りの雨。
帰宅ついでに駅の本屋によって行こうと考えていた私にとって
このような雨は厄介だと昇降口で立ち尽くしていた。
今日はどうしようか、雨なんて降らなければ。

「名前先輩!」

そんな私に後ろから不意に話しかけてきたセリフの通りの後輩くん
切原赤也だった。といっても同じクラスの仁王やブン太の後輩くんで
よくうちのクラスに遊びに来るから私もなんだか顔見知りになった。
そんな切原赤也が私になんのようだろうか。

『どうしたの?後輩くん』

「ん、その、後輩くんってのやめてくんないすか!」

『だって、後輩くんは後輩くんじゃない』

「そうっすけどー…」

不満そうな顔をする切原赤也をよそに
私は事の始まりを思い出した。
そういえば彼は私に急に話しかけてきたのではないか。
その用がこんな呼び方どうのってハナシなわけがない。

『で?その"後輩くん"が私に何の用?』




「…ん、あ、そのー…、傘」

『傘?』

「えっと、俺、傘忘れちゃったんすよねー…。そんで!もしよかったらー…、」


なにか言いたげなご様子。
そんなことなら早く言ってくれれば、と私は鞄の中をあさった。


『あった。はい、どーぞ。私普通の傘も持ってきてるから遠慮なく使って。』

「…」

『何?どうしたの?傘ないんでしょ。』

「そーなんすけど…」


何故だろう。彼の欲しがっていたのはこれじゃないか。
それとも、私の折り畳み傘じゃ不満なのかしら。
じゃあいったいどうして私に声をかけたのよ。


『まあ柄は確かに男の子用じゃないけど別にいいじゃない、帰るくらいでしょ?』

「いや、その!…一緒にっ」


まったく、訳が分からないと、ため息をつこうとした私の目に
後ろでこちらを心配そうに見ている女の子の姿がうつった。


『あの子、知り合い?』

「えっ、あぁ!ただの幼馴染っすよ!」


幼馴染、ふーん。


『一緒に帰るんだったら女物の傘だって別に目立たないんじゃない?』

「えっ」

『ふふっ、あんまり女の子を心配させちゃだめよ?』

「ええ!?」

『その折り畳み傘、いつ返してもいいから。どうせまた教室あそびにくるでしょ?』

「え、あぁ、」

『それじゃあね』


そう告げると私は傘立てから傘をとり、足早に昇降口を後にした。
本屋によるのはどうしようか、こんな雨の日はまっすぐ帰るべきか。
うーん、どうしようか。
なんて考えているはずだったんだけど、
頭はそれよりも別のことに気を取られているようだった。

なんで私、もやもやしてんだろう。

雨なんて降らなければ。





雨、後輩





「はぁー…、絶対先輩に誤解されたー…」

「全く、なんで最初っから言わないのよ!」

「言えねーよ!そんな、傘忘れちゃったんで先輩の傘入れてくださーいなんて」

「なにヘタレてんのよ。あんたそんなキャラじゃないでしょ!」

「だって、なんかキンチョーすんじゃん…」




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