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『あ、岳人!』
「ん?」
『誕生日おめでとう!』
「…あぁ。」
9月12日夕刻。
正直に言おう
私は岳人の誕生日を忘れていた
『やっぱ怒ってる?』
「別に。」
『怒ってるじゃんー…』
言い訳をさせて!
12日ってなんか覚えづらくない!?
ほんとに苦しいだけの言い逃れで
更に岳人を怒らせかねない
もっとマシな言い訳は無いものかと思考をめぐらしている私は
我ながら酷い奴である
『いいじゃん!私一人祝わなかったところで、別にあんたはいくらでも祝われてるんだからさ』
そうだそうなんだ!
今日教室がなんとなくいつもより騒がしかったのはそのせいだ
「んなの関係ねーじゃん!」
『なんで関係無いのよ!いっぱい言われたら嬉しいでしょ!』
「お前に言われなきゃ、嬉しくねーし」
『…は?』
「だから!来年も忘れないで祝えっての!9月12日だからな、12日!」
真っ赤な顔でそう言いながら
教室を出て行く岳人
『自分で言ったくせに、なんで赤くなってんの…』
後ろ姿を見ながら私は思わず苦笑してしまった。
9月12日。12日。
今年はもう遅いであろう日付を心の中で復唱した
覚えて、誕生日
なんだかこっちがプレゼントをもらった気分
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