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―――――ザザーッ…




砂浜に残るのは

一人の足跡。
















「なぁ、名前」



つぶやいた言葉も

波の音によってかき消された。













『山本がいなくなったら、私死んじゃうから』









いつか聞いたあの一言。

それだけが脳内に響いていた。



















前にこの海にきてから5年がたった。

隣に名前の姿は無い。






突然だった。


名前は事故で死んだ。




ずっと一緒のはずだった

そう思ってたんだ、



















海の方に歩みを進めると
足元に白く光るものが見えた。



「これ…」

しゃがんで見てみると
あの時と同じ白い貝だった。







“ずっと一緒にいた一枚を失っても”











「やっぱり、平気な訳ないよな」


















――――ザザーッ、



しばらく海をただ眺めた後、

俺はポケットから1通の手紙を出した。


















名前が死んで少し経ってから、

彼女のお母さんが俺のところへ来た。











――――






「これ、名前の部屋片付けてたら出てきたの。」

「俺に、ですか?」

「えぇ、山本くん宛て。中身は見てないから安心してね。」

「……」

「きっと、あの子の気持ちがかいてあるんじゃないかと思う、」

「…はい」

「ごめんね、やっぱり渡さない方が良かったかしら。」

「いえ!」


名前のお母さんが渡さずしまおうとしたのを俺は慌てて止めた。




「……ありがとう、受け止めてくれて。でも…山本くんにはこれからがあるんだから、前を向いて生きてね。」

「…はい…!」











あの時受け取った手紙。

結局いつまで経っても見る勇気がでなくて

今の今まで、開けずにいた。







大丈夫、今なら




そう言い聞かせ、封を開ける。


















――山本へ















久しぶりに見る彼女の字に

思わず手紙を閉じそうになる。



でも、今日は読むと決めたのだからと
意を決して次の文に目を落とした。












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