運命の人 | ナノ


消えた7



非常口もセメントで固められて脱出は不可能。
完全に脱出経路も断たれて、私達は此処から出ることが出来ずにいる。



「あんたの所為で関係ない私達まで!」

「そうよ!どうしてくれんのよ!!」


毛利さんが顔を顰めて俯いたのを見て、私も胸が苦しくなった。
…毛利さんの所為なんかじゃないのに。
彼が胸を痛める理由なんて無い。



「村上が順番を変えてなかったってことは…次に狙われるのは奈々ちゃん、君だってことだ」

「や、止めてよ!何でそんな、名前も知らない男に狙われなきゃいけないの?」

「でも気になることあるんでしょ?だってさっき…」


関係ないと言い張る奈々さんに、関係ないかどうかは自分達で判断すると目暮警部が言葉を促す。
静かにその時のことを話し出す奈々さん。
三か月前の夜、車を運転中に携帯電話で話していた所、信号が赤になっていることに気付くのが遅くなり交差点に出る形で停車してしまった。
その時、バイクが交差点に入って来て自分の車を避けようと運転者が転倒したらしい。
接触は無かったが怖くなってその場から逃げたと言う。


その話を聞いて毛利さんは関係ないと判断し、それよりも此処から脱出することを考えるべきだと目暮警部と話している。
警部も同じ様な結論に至ったのか、建物中を探せば何処かに出口があるかもしれないと探しに行った。
続く様に宍戸さん達も。


「蘭とコナン、名前は此処にいろ。奈々さんも此処を動かない様に!」





男の人達が皆、出口を探しにホールから出て行ってしまった。
ひ、一人くらい男の人を残していっても良いんじゃないかしら。
男より何倍も強いんじゃないかって蘭がいるから心配はしてないけどさ…。


…10分くらい経っただろう。
けれど探しに行った人達はまだ誰も帰って来ない。
どうしたんだろう…何かあったとかじゃないよね。



「…皆、遅いわね。出口、見つからないのかしら」

「きっと誰かが見付けて戻って来ると思いますから、一緒に待ちましょう?」


不安そうにしきりに腕時計を見る奈々さんの隣に行って笑顔を見せた。
奈々さんの細い手首を優しく握る。
不安な時に誰かの温もりを感じると落ち着けるっていうのは体験済みだから。

私と奈々さんが話しているとコナン君がレストランから出て行こうとしているのを見付けてしまう。
…出口探しに行こうとしてるんだろうな。



「こら!此処にいなさいって言われたでしょ!…まったく、好奇心旺盛なんだから」

「あーん!だってぇ…」


蘭に見付かってしまったのか、手を引かれて元いた場所に戻される。
……しかし、あーんって…あーんって!!
可愛いうえに演技力がありすぎるというか、とにかく可愛すぎて、今無意識のうちに口角上げてたんだけど…私って変態かなぁ。
いかんいかん、コナン君に見られないようにしないと。
蘭に連れられてきたコナン君が不服そうに口を尖らせているのを見ていると、パッと照明が消えた。


「えっ?」


何で突然…停電?
暗闇に目が慣れなくて何も見えない。


「何っ…!?どうしたの!?」


近くから奈々さんの恐怖に怯える声が聞こえて来て、何処にいるのかと無造作に手を伸ばす。
さっき手を掴んだままでいれば良かった…!
見つからなくて闇雲に手を動かしていると、暗闇の中で10個の光が動いた。
あれってまさか、奈々さんの爪!?



「奈々さんっ!!」


その光に近付こうとすると、私の近くを風が通っていった感じがしてその後にパリーンと硝子が割れる音が響く。


「きゃーーっ助けてぇっ!!!」

「な…離れないで奈々さん!」


バタバタと奈々さんの位置を示してくれる爪が勢い良く離れていく。
狙われてるかもしれないのに離れるのは一番危険だ!


「ぎゃああぁーっ!!!」


お腹に響いたんじゃないかってくらいの叫び声が耳を劈いた。
絶望をのせた声色が糸が切れてしまった様に消えていく。
奈々さんは…、

光っている爪に近付こうとするとカランと音がした。
…何の音?




次の瞬間、パッと光が点く。
誰かがブレーカーを上げてくれたんだろう。

……そして床には、背中にナイフを突き刺されて横たわっている奈々さんの姿。
蘭の叫び声がホールに響いた。

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