運命の人 | ナノ


ブラインド・テイスティング



ホールへ戻って来ると、ちょうど宍戸さんが自分の名前には数字が入っているということを話していた。
一応、目暮警部に異常が無かったことを言って席に着く。


「宍戸の宍にゃ、六が入ってんだろ」

「あっ、確かに!?」

「他の三人にも数字が入ってるよ?」


コナン君が旭さんに呼ばれた皆さんの名前に数字が入ってることを教えてる。
順々に教えていくと、毛利さんが3と1がいれば全部の数字が揃うことが分かったみたい。


「三ならいるぞ。君の目の前にな」

「え…?おい、まさか…」


毛利さんの目の前…って、白鳥警部?
そういえば白鳥警部の名前って一体、


「私の名前は白鳥任三郎なんです」

「任…三郎…?」


う、嘘ん!?
何処かの時代劇に出てきそうな名前でぽかーんと口が開いた。
……任三郎…笑ってしまいそうな名前に心の中だけで吹き出す。

でも…これで揃ってしまったんだ、名前に数字を持つ人が。




「奈々さん、何か…?」

「その人…八日前に出所したんだよね?」

「ええ」

「じゃあ関係ないや」


…どうしたんだろう?
関係ないや、と言った奈々さんはさっきのことは無かった様におどけてみせた。
奈々さんの様子…何か知ってるみたい。
私が考えていると、奈々さんが仁科さんに突っかかった。
どうやら仁科さんが出版した本に載っていた店が不味かったらしい。
証拠を見せてよ、と言う奈々さんがブラインド・テイスティングをする様に仁科さんに話を持ちかけている。
自信があるのか仁科さんは首を縦に振った。




奈々さんが持ってきたワインを開けて、仁科さんから見えない様にグラスに注ぐ。
それを仁科さんの前に置いた。


ワイングラスを傾け、色・香りを見た後に少しだけ口に含む。


「この優雅な菫の香り…ビロードの舌触りと喉越し。かのフランス皇帝ナポレオンの愛したシャンベルタンですね」

「アッハッハ!引っ掛かった!!私がそんな何万円もするワイン、お土産に買う訳ないじゃない!」


馬鹿にする様に大声を上げて笑った奈々さんが沢木さんの前にワイングラスを置く。

ソムリエの沢木さんに本当は何なのか当てさせるみたい。
さっきの仁科さんと同じ様にワインの色、香りを嗅いで口に含む沢木さんを見つめる。


「ボージョレのムーラン・ナ・ヴァンですね」

「大正解!」


…凄い。
素直にそう思ったけど、彼がこの事件の犯人じゃないかと疑っている私は素直に感嘆出来ずにいた。



「何だか僕もワインが飲みたくなっちゃったな」


私の暗い心情を吹き飛ばすかの如く、ピーターさんが笑顔で言った。
…目暮警部から説明されてるよね?
今、このアクアクリスタル内に殺人鬼が潜んでるかもしれないってこと。
それなのにワイン飲みたいなぁ、なんて呑気なことを言えるなんて事の重大さが分かっていないのか…それともただの馬鹿なのか。
ふぅと溜め息をつく。



「名前ねーちゃんも何か飲む?」

「ジュースなら何でも良いよ」

「分かった」


じゃあ俺はビールだ小僧、案内しろと言って歩き出す宍戸さんとコナン君を見送る。
……溜め息しか出て来ません。

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