お昼の情報屋さんからの情報
『よ、いしょっ!』
両手に持ったスーパーの袋を持ち直す。
…やっぱり一人で買い物袋とトイレットペーパーとティッシュを持って歩くのはキツイな。
だってトイレットペーパーとティッシュが特売だったんだもん!
これは買うしかない!と後先考えずに買ったのがいけなかった、両手が千切れちゃいそうです。
『ん?』
帰りの道中、奥様方が集まってざわざわと井戸端会議をしていたので何事かと歩きながら聞き耳をたててしまう。
「さっき帝丹小学校にヘリコプターが落ちたらしいわよ」
「えっ!?子供達は大丈夫なの!?」
「墜落して爆発したらしいけど大丈夫みたい」
ヘリコプター爆発…帝丹小?
それだけ聞いただけなのに思い浮かんだのはコナン君のことで。
『あ、あの!』
「あら、名前ちゃん」
「まぁ…可愛いらしいわ!工藤さんの所のお嫁さんね?」
『いや、違います!』
というか、ご近所さんの理解も私は工藤君のお嫁さんになってるんですか!?
嬉しい様な否定しなきゃいけなくて切ない様な微妙な気持ちで微笑みながら質問をする。
『ヘリコプターが墜落したって本当ですか?』
「えぇ、今、警察が集まっているみたいだけど…子供達は無事みたいで安心だわ」
『誰が操縦していたとか分かりますか?』
「それは分からないけれど…墜落したヘリの中から小学生の子が出て来たみたいよ。大丈夫なのかしらねぇ?」
……コナン君ね。
そんな危険な状況にいる小学生なんてコナン君しかいない。
『ありがとうございます。用事思い出したのでそろそろ行きますね!』
じゃあねぇ、なんて手を振ってくれる奥様方に会釈をして歩き出す。
ちらりと後ろを見るとまた井戸端会議を再開していたので、奥様方のトークパワーは凄いなと思う。
…私はあんな風に毎日集まって談笑は出来ないなぁ。
走って家に帰った私は買い物袋を机に置いて、携帯電話を取り出してかける。
プルルルと暫く鳴ったコール音の後に電話相手が出た。
〈どうした?〉
『もしもし、コナン君?大丈夫?』
〈は?何がだよ?〉
『飛行機、不時着させたって聞いたけど』
〈え!?誰に聞いて…〉
『井戸端会議してるお昼の情報屋さんから』
〈………近所のおばちゃん達か〉
コナン君の声の感じだと大事には至っていないみたい。
まぁ…コナン君なら大丈夫だとも思っていたけど、心配だったことは心配だったから本当に良かった。
『今どこにいるの?』
「おっちゃんの知り合いで名前に九がついてる人がいたから、その人の所に向かってるけど…何でだ?」
『それ何処?』
「…東京湾に出来るアクアクリスタルだけど」
『……うん、よし分かった』
自分の財布の中身を確かめて一人で頷く。
これだけあればアクアクリスタルに行くくらい大丈夫だ。
「……オメーまさか、来るとか言い出すんじゃねーだろーな」
『え?そのつもりだよ?』
「何言ってんだ!殺人犯が来るかもしれないんだぞ!?」
『その言葉、そっくりそのまま返すよ。コナン君は知らないけど私、前の世界じゃちょっとテコンドーかじってたの。蘭みたいにボッコボコに出来るほどじゃないけど自分の身くらいは守れるよ』
「お前なぁ…!」
そこからグチグチとテコンドーかじってたとしてもオメーは女なんだからとか、相手は殺人未遂してる奴なんだとか。
『……言っちゃうけど君、博士の発明品があるから助かってるけど小学生の体なんだからね?』
「……」
押し黙ったってことは私の言ってることも正論だって理解はしてるってことね。
他の小学生と比べちゃうと頭脳も身体能力も何もかも上だけど、小学生だって所は何も変わってないから大人と対決すると危険に晒されることもある。
『…という訳で、すぐに行くから』
無言のコナン君はそれでも納得がいかないのか返事をしてくれなかったから一方的に電話を切った。
…納得してくれるまで待ってたら日が暮れちゃう。
いる物はそんなに無いから財布と携帯と最低限の物だけ持って家を出る。
向かう先は、アクアクリスタル。
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