運命の人 | ナノ


突き抜けた羞恥心



一週間ほどが経ったある日、目暮警部が襲われたとの凶報が知らされて数日も経たない内に妃さん、博士と何者かに襲われてしまった。
目暮警部はお腹を博士はお尻をボウガンで、妃さんはチョコレートの中に毒物を混入されて狙われたらしい。

博士のお世話をする為に林檎の皮を剥いていた所へコナン君達がやってきた。
白鳥警部も来たから、一気に病室内が人で埋まる。



「トランプ!?」

「うん!犯人はトランプの絵札に合わせて犯行をやってるんだよ!!」


犯行現場に落とされていた遺留品と今回、襲われた人達の名前には全て数字が入っていること。
目暮警部は名前が十三だから13、妃さんの名字は英語でクイーンだから12、博士は名前が阿笠博士で士の字は分解すると十一になるから11。
そして…毛利さんに関係のある人物が襲われている。
トランプの数字になぞらえているということは、この先もまだ同じ様なことが続く可能性があるということも。

…毛利さんに関係があって、名前に数字がある人?
それって、工藤君も含まれる、よね。
毛利さんの人間関係を全て知っている訳じゃないから、一の数字がつく人は他にもいるかもしれないけどフッと浮かんだのは今、一生懸命に説明しているちっちゃくなってしまった名探偵さん。
その考えに至ったらそうとしか考えられなくて、いつの間にか来ていた目暮警部にも気付かなかった。


「犯人はおそらく村上丈だ」

「村上丈!」

「これが十年前の村上丈だ」


カード賭博のディーラーをしている様子を写真に撮った物を警部は出して私達に見せてくれる。
そこには制服を着て、後ろにたくさんのお客を立たせてカードを配っている村上がいた。
これがこの一連の事件の犯人…?
うーん……何か、違う、ような気がする。



『……何で、記憶無くなっちゃったのかな』


ボソリと言った私の言葉は小さすぎたのか、それとも話に夢中になってくれていたから聞こえなかったのか…分からないけれど、私を見てくる視線は無い。

記憶があったら、警戒しておくくらいは出来るのに。
それすらも出来ないから、もどかしさを感じてしまう。
どうしようどうしようと思ったって、今から思い出せるかと言ったら思い出せないし…考えていると話が終わったのか、次の標的にされる人が分かったみたいで目暮警部達が博士に一声かけて病室を出て行こうとする。


「オレは十和子さんの所へ行って来るから蘭とボウズは白鳥に送ってもらえ」

「うん。さ、帰ろっかコナン君」

「あ、僕もう少し此処にいるよ!」


博士のことも心配だし!と笑って言うコナン君は歳相応に見えるけど…ぶりっこ全開だね。


『じゃあ、私がコナン君送るよ』

「ボク、一人で帰れるから。名前姉ちゃんの方が女の子なんだし、暗くなってきたりすると危ないから送るね!」

『……ありがと!』

「んーそれじゃあ、お願いね!」


平静を装って笑顔で返したけど、内心ドキドキが知られないかとヒヤヒヤしてる。
…好きだって認めてから、ずっとこう。
そんな感情が無かった時、私はどうやってコナン君と接していたっけ。
初めて会った時、わたし、は……



『っあー!!?』

「!?」



私っ…あの時、ブラジャーで工藤君の前に出たよね!?
うわうわ…あの時はまだ工藤君のこと何とも思ってなかったし、年齢的に弟みたいな感覚だったからブラジャー姿くらいどうってことないなーとか思ってたあの時の自分どうかしてた…!


「おい、大丈夫か?」

『ひゃああぁっ…!?』

「いぃっ!?」


う、あんまりに恥ずかし過ぎて覗き込んで来るコナン君の顔を思いっきり逸らしてしまった。
ゴキィ!って不吉な音がしたけど…き、聞かなかったことにしよう!
いや、コナン君は悪くないし寧ろ進んで見せちゃったのは私っていうか…だってでも今更になって恥ずかしくなっちゃったんだもん!!
穴があったら入りたいって言葉の意味が見に染みる…!



「…ってぇな、何すんだよ!」

『な、なん、何でもない!』


あー…こんなの私じゃないみたいだ。
私ってこんなに恋愛下手だったっけ?
まるで初恋みたいに、どうやって好きな人と接すれば良いか分からない。
平常心…平常心……前みたいに接すれば大丈夫!!

バクバクしていた心臓を宥めて周りを見ると蘭達は既にいなかった。
それすらも気付かなかったくらい自分の世界に入り込んじゃってたんだ…。



『ほ、本当にごめんね…?』


ヤバい音もしてたし、心配になってきた。
首に手を当てて大丈夫か見るとボッと顔が真っ赤になった。
……へっ?何でそんなに顔赤く…、


「ちょ…!?」

『顔赤いよ?熱でもある?』

「ない、ないから離れろ!!」


そんなに勢い良く離れて行かなくっても…ちょっとへこみそうだよ、お姉さん。
私のことなんて、何とも思ってないんだろうな。
それを考えたら悲しい、というか切なくなってきて…切った林檎をコナン君の口に突っ込んだ。


「もごっ!?ふ、ひゃいふんひゃよっ!!」

『…お食べ』


もごもご言ってるコナン君がちょっと可愛いかも、なんて思ってしまった私は末期なのかしら。
コナン君から視線を外して私はしゃくしゃくと林檎を食べた。

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