ありきたりな将来の想像
夢を見ていた。
ぶくぶくと水中にいる感覚。
夢の中なのに息が出来なくて、苦しくて。
もがいても、そこから抜け出すことが出来ずに身を任すしかない。
…このまま死んじゃうのかな、って思ったら目が覚めた。
『……っあー…嫌な、夢』
起きても夢の中の苦しみが残っているみたいで苦しい。
落ち着いて深く息を吸う様に呼吸をすると苦しさがなくなった。
『……起きよ』
今日は少年探偵団の皆が東都航空記念博物館に行った後に、家に遊びに来るから用意しないと。
飛行機かぁ…飛行機自体に興味はあまり無いけど、飛行機の模擬操縦はやってみたい。
そうそう出来る物じゃないからやりたい気持ちはあるんだけど、工藤君みたいに万能に吸収できる訳じゃないから私じゃ無理な気がする。
……諦めよう、うん。
今日は博士も入れて夜ご飯も食べて行くみたいだから頑張らなきゃね。
特に…よーく食べる元太君がいるから張り切らねば!
よし!と独り言を言って伸びをしてから部屋を出た。
数時間後、とんとんとまな板の上で野菜を切っているとインターホンが鳴った。
はいはーいなんて返事をしながら出ると、博士と少年探偵団の皆が笑顔で立っている。
『いらっしゃい!入って!!』
「お邪魔しまーす!」
もう何回も来ているから気心知れた場所なんだろう、探偵団の皆はさっさと中へ入って行く。
「すまんの、名前君。ワシもお邪魔させてもらって」
『気にしないで良いよ!だって博士1人だと栄養の偏った食事ばっかり摂ることになるだろうし。それ以上、お腹周りが太っちゃったら大変』
「アハハハハ…」
「…ハッハー」
空笑いした博士にコナン君も苦笑いを浮かべた。
だって本当のことでしょ。
ただでさえメタボってるお腹なんだから肉類とかインスタント系ばかりじゃなくって、ちゃんとした食生活しなきゃ。あと運動も!
リビングまで向かいながらコナン君と話す。
『コナン君も大丈夫だって?』
「あぁ、あんまり迷惑かけないようにねーって言われたけどな」
『そっか。何かさー……これ、私と博士が歳の差夫婦で歩美ちゃん達が子供みたいだね』
「はあっ!?」
「え?」
いや、だってね?博士が子供達を遊びに行かせて、帰って来たら妻の手料理を仲良く食べる。
…そんな図式が成り立ってない?これ。
「……オメー…ほんっと、止めてくれ。冗談でもキツイ」
『だよねー。私もさすがに博士と夫婦営んでいく自信は無いわ』
「オイオイ…」
博士に大変失礼なことを言ってるね、私。
それでも怒らない所、博士はやっぱり優しいなって思う。
だから哀ちゃんも博士を大切だって思えるんだよね。
『あ、でも、歩美ちゃん達みたいな可愛い子供は欲しいかな』
「え?」
『好きな人と結婚して、その人との子供つくって…ありきたりで平凡な将来だけど、そんな未来だったら良いなって思う』
……今の所、そんな将来が来ることはないと思うけど。
「………」
『…何故、コナン君は顔を赤らめているの』
「へっ!?こ、これはっ」
『…蘭との子供はきっと今のコナン君みたいに可愛い顔だと思うよ』
「そんなこと考えてたんじゃねーよ!?」
きっと男の子でも女の子でも可愛らしい子供が生まれるんだろうな。
……あ、そんなこと考えたら何だか悲しくなってきた。
その相手は絶対に私じゃないから。
「お、オレ、は…その、」
「3人共、何話してるのー?」
ひょいっと覗き込んでこっちにやって来たのは歩美ちゃん。
…歩美ちゃんみたいな素直で可愛い子供が欲しいなっ!
可愛いお人形さんみたいで!
『んー?将来のお話、かな?』
「へぇー…あっ!そういえばね!トランプ占いのゲームでコナン君と歩美、相性ピッタリだったんだよ!」
『そうなの?良かったねっ、歩美ちゃん!』
嬉しそうに話す歩美ちゃんに連れられてリビングへ行く。
……かーわいー…お姉さん抱き締めたいんだけど駄目ですか。
でもそこはグッと我慢して頭を撫でるだけで終わった。
「………苦労するのぉ」
「ハハ…アイツはオレの気持ちなんざ全然、気付いちゃいねーよ」
オレの気持ちに気付いてる博士は気まずそうにオレを見て苦笑した。
真っ先に考えたのは、名前のこと。
結婚なんて実感のわかねー話だけど……出来るなら、アイツと、なんて。
自分の気持ちも言ってないのに考え過ぎだろ。
歩美がやった占いゲームの結果を思い出す。
意中の人と急接近、Aの予感。
何年前のゲームだって感じだが……少しでも良い、名前との距離がもっと近付けばと思う。
prev / next