トライアングルの始まり
コナン君先導の元、行き着いたのは機関室。
こっち来い、と言われて蘭から離れさせられ今はコナン君の後ろにいる。
何処にあったのかサッカーボールを出したコナン君がリフティングをしながら、自分の推理を話し出した。
真珠の宝石言葉は「月」と「女性」
それに当て嵌まるのは、名前に月を持つ「鈴木朋子」さんだけ。
そしてキッドの正体。
真田さんのマジックで彼以外にカードをすり替えられた人物、それに当て嵌まり尚且つお母様に近付いた人物…、、
「そう…、その人物は床にカードをバラまかせ拾うふりをしてカードを一枚抜き、メッセージを貼り付けた。それを手の平に忍ばせて、あたかもカードの束から引いたかの様に見せかけたんだ…だよね?蘭ねーちゃん……いや、怪盗キッドさんよぉ!!」
追いつめていくコナン君の言葉に、キッドのペースが崩れていっているみたい。
…というかコナン君、自分が小学一年生だってこと忘れてるでしょ。
完璧にあの蘭の前とかで見せるブリッコナンじゃなくなってますよ、君。
そんな風に態度に出してたらすぐに正体バレちゃわない…?
「フ…情けない話だぜ。お前の存在に気を取られて、すっかり忘れてたよ」
「でも…米花博物館の漆黒の星はキラキラしてた様な…」
「だから盗らなかったんだろ?偽物だと知ってたから…そして二度目の予告状で奥さんを挑発し、本物を持って来る様に仕向けたんだ。わざわざ「本物の」って記してね…」
「わ、分かったわ。そんなに疑うんなら、電話で此処に警察の人を…」
蘭が取った受話器がコナン君が蹴ったボールによって破壊される。
き、器物破損になっちゃうよコナン君!?
……あぁ、そうか…この世界じゃ何でもありか。
「フン、ビルの屋上で消えた時と同じ手は使わせねーよ。それに…この場に人を呼ぶなんて野暮な真似は無しだぜ?こっちはこの警戒の中、たった一人で乗り込んで来た犯罪の芸術家に敬意を表して、一対一の勝負を仕掛けてやってんだからよ」
「……」
格好良いな、なんてこの緊張した場に似合わないことを考えてしまった。
パリパリとキック力増強シューズが光る。
「そう…優れた芸術家のほとんどは死んでから名を馳せる。お前を巨匠にしてやるよ、怪盗キッド。監獄という墓場に入れてな」
コナン君の言葉に惚けられないことを察したのかキッドが小さく笑みを作って、盗った漆黒の星を取り出した。
「フ…参ったよ、降参だ。この真珠は諦める…奥さんに伝えてくれ、パーティーを台無しにして悪かったって」
「今更何を…」
投げ渡した黒真珠は見事にコナン君の手におさまる。
色褪せたって言ってもそれは鈴木財閥の家宝だから丁重に扱ってあげて!?
「あ、そうそう。この服を借りて救命ボートに眠らせてる女の子…早く行ってやらねーと風邪引いちまうぜ?オレは完璧主義者なんでね」
「『な!?』」
胸元から出したのはブラジャーで。
キッドの口振りからするとそれは確実に蘭の物……この変態!悪い様にしてないとか言っておきながら、ちゃっかりしてるじゃない!?
早く行かなきゃと機関室を出ようとしたら、いつの間に側に来ていたのかキッドが私の体を抱き上げた。
『ひゃっ!?か、き、キッド!?』
あ、危なかった…!
咄嗟に快斗って言っちゃう所だった!
「名前!てめっ……!」
「オレは怪盗だぜ?欲しいモンは盗む、それはボウズでも容赦はしねー」
「何…」
「それより良いのか?女の子」
「そんなことより名前を離せつってんだよ!」
そんなことよりって!?
私よりも蘭を助けに行きなさいな!
「へぇ…ボウズ、名前嬢のこと好きなのか?」
「わりーかよ!?良いから名前を離せ!!」
『え…』
「ふぅん……じゃ、ライバルっつーことで。オレも名前嬢が好きなんでね」
『ははは、はっ、はいっ!?』
ちょ、ちょっとちょっと…待って!?
どういうこと……しっ…心臓が五月蠅い…っ。
状況がいまいち掴めていない私を無視して、キッドがサングラスをかけて閃光弾を爆発させた。
コナン君もかかってしまったらしく、私の名前を呼んでいる。
『わ、私は大丈夫だから蘭を探しに行って!!』
コナン君が怯んでいるうちにキッドが私を抱いたまま、機関室から逃げ出した。
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