盗まれた漆黒の星
ガヤガヤと騒がしい会場へ戻り、一際オーラを放っている毛利さんの所へ行くと園子が蘭について話していた。
「きっとどっかで迷ってるんですよ。蘭って方向オンチだから」
「どーせ方向オンチですよ!」
「あ、蘭…」
『ただいま。コナン君のこと探してたら蘭見つけてさ、一緒に探してたら急にどっか行っちゃうしビックリしちゃった』
「もう!止めてよ名前!」
もう完璧に蘭になりきっている快斗に死角はない。
蘭と話している錯覚に陥りそうになるけど、根本的な所に感じるのは蘭じゃなく快斗で。
「えー警視庁の茶木です」
今度は壇上に上がった茶木警視が喋り出した。
茶木警視が喋っている内容は、側にいる人とペアを組んで二人だけの合言葉を決めるキッド対策。
…うーん、その対策よりは一人一人調べ上げた方が確実にキッドを捕まられるんじゃないかってことは言わないでおこう。
ヒソヒソと周りが合言葉を決める中、私は園子と話す。
コナン君は蘭と合言葉を決めているみたい。
『合言葉どうしよっか?じゃあ…私が1412って言ったら』
「私はキッド様LOVE!!ね」
『園子…それ合言葉っていうか感想』
園子らしい合言葉というか感想を聞いているとフッと光が消えた。
暗闇に目が慣れないでいると、高笑いが聞こえる。
スポットライトを浴びて登場したのは怪盗キッド。
キッドは今こうして私の隣に蘭に変装しているから、あれは偽物だってことがすぐに分かった。
何だろうと思っていると、園子のお母様が拳銃を取り出してキッドを撃った。
撃たれてしまったキッドは大きな音をたてて下へ落ちていく。
お母様、過激すぎる…!
大丈夫なのだろうか……そう思っていると、キッドがむくりと立ち上がった。
聞けば彼はマジシャンの真田一三さんで、この余興の為に鈴木財閥が雇ったらしい。
…あれが快斗だったらと思うと、少し怖い。
中森警部は快斗を現行犯逮捕したいと思うから絶対に殺しはしないだろうけど、もしものことだってある。
隣にいる蘭を見ると目が合って、ニコリと微笑まれた。
私の考えていることが分かったのか大丈夫と口パクで言った笑顔に安心する。
大丈夫、だよね、快斗は。
私達二人が無言のアイコンタクトをしていると、真田さんがステージでマジックを披露していた。
その間に、コナン君が何かに気付いたのか毛利さんからパーティーに来ている人達のリストを見ている。
『…分かった?』
「ん?……あぁ、誰が本物の漆黒の星を持っているか…分かったぜ」
コナン君が笑うと、マジックをやっていた蘭達が驚愕の声を上げていた。
近付いてみると蘭が持っていたトランプにキッドからのメッセージが貼り付いていたらしい。
…仕掛けたのね、快斗。
キッドがもう会場にいると分かってざわざわと周りがざわつき始めた。
自分のペースに持っていっている。
次は何をするのかと注意深く蘭のことを見ていたら蘭の胸の真珠が無くなっていた。
『蘭?胸の真珠、無くなってるよ?』
「え、嘘?あ…すみませーん!誰かその真珠拾って下さい!」
コロコロと転がっていった真珠が煙を上げてパァンと破裂音を出す。
え!?ちょ、真珠が爆発しましたけど!?
真珠が爆発したと分かって、より一層騒がしくなり恐怖から部屋を出てしまう人も現れた。
これが狙い、かな。
「き、きゃあああああぁぁっ!!キッドよ!キッドに漆黒の星を盗まれましたわ!」
園子のお母様が甲高い声を上げて漆黒の星が盗まれたことを知らせる。
手際が良いなぁ、と感心しているとコナン君が蘭の手を掴んだ。
「蘭ねーちゃん、ボクらも捕まえに行こう!」
「え?」
「分かったんだよ!怪盗キッドの正体が!!」
「えーーっ!?え、あっ、名前も行こう!?」
「!?」
『なんっ……何で私もぉっ!?』
3人仲良く手を繋いで…なんて雰囲気ではなかったけれど、人の波に紛れて会場を抜け出した。
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