運命の人 | ナノ


漆黒の星-ブラックスター-



自分の家に帰って園子から貰ったキッドの予告状を見る。




April fool
月が二人を分かつ時
漆黒の星の名の下に
波にいざなわれて
我は参上する

   怪盗




園子のお父さんが予告状を読んで、怒って破ってしまったらしいから読みにくいけどそう書いてある。
うーん………分からぬ。
April foolっていうのは4月1日、これが予告日なんだろうけど…でも4月1日って嘘をついてもいい日だよね?
だったら嘘だってことも有り得る、かもしれない。
それじゃあ月が二人を分かつ時っていうのは……んー…。
どれだけ頭を捻ってもそこから先の暗号を解くことは出来なくて、予告状とにらめっこ。
きっとコナン君が暗号を解いてくれるだろうし任せちゃおう!


後になって必要になるだろうキッドに関するファイルを優作さんの書斎から持って来て自室のベッドへダイブする。
…此処に載っている事件を起こしたのは快斗じゃなく盗一さん。
優作さんと盗一さん、工藤君と快斗。
親子で同じ様にライバルとなるのは…運命だったのかな?
うとうととしながらファイルを捲り続ける。
明日はお昼から米花博物館に行かな…きゃ…いけない、から…。
重くなってきた瞼に勝てることが出来ずに、私はそのまま眠りについた。








3月31日 PM 1:42
米花博物館




入館する前から警察官の物々しい警備が気になった。
目玉の鈴木家の家宝である漆黒の星の警備は、他のどの宝石よりも厳重にされている。



「ふあぁ…」


大きな欠伸をしたコナン君が目に映る。
昨日、蘭も毛利さんに見せる為に園子からキッドの予告状を持って行ったから、暗号好きなコナン君が目の前の好物に食いついてきっと徹夜して推理してたんだろうなぁ。
でも解けなくて、未だに予告状とにらめっこしてるみたい。



「おお、毛利探偵!ようこそおいで下さいました。この度は娘の我が儘を聞いて頂きありがとうございました!名探偵の貴方に来ていただければ百人力、期待してますよ毛利探偵!!」


パーティー用グッズみたいに素敵な眼鏡とお鼻とお髭の園子のお父様がいらっしゃった。
とっても優しそうなこのお父様と、元気いっぱいマシンガントークが特技の園子との図式が繋がらない。
しかし博士といい、目暮警部といい…恰幅の良い方がたくさん登場するなぁ。


ショーケースに入れられた漆黒の星を見つめていると、くいくいと服の裾が引っ張られる感覚。



「名前ねーちゃん、見えない…」

『…………』


蘭は園子と喋ってたから私に言うしかなかったんだと思う。
だけどもこの威力は半端無い…!!
あぁ駄目っ…クラッと来た…鼻血とか出てたらどうしよう、いやさすがにそれは無いか。
でもでも上目遣いでちょっと恥ずかしいのか、ほっぺたを赤くしたコナン君の可愛さにノックアウト。
可愛過ぎてボー然とコナン君を見てしまう。


「……オメー…また可愛いとか気持ち悪りーこと考えてんだろ」

『え゛』


さっきみたいな天使の声じゃなく、ドスの聞いた低い声が小さな声で発せられた。
皆が見てる時は可愛く小学生を演じて、見ていない時は小さい声で威嚇してくるなんてっ!?


「………図星かよ」

『だって…!そんなに可愛いコナン君が悪いんだっ!』

「はあー………ん、」


そんなに見たいのかい、漆黒の星。
両手を広げて良いから早く見せろや的なことを言ってくるコナン君を抱き上げてショーケースを覗かせた。
世界最大の黒真珠というのは伊達じゃなく、キラキラと綺麗に光り輝いている。



「川だ川だ!!怪盗1412号はこの博物館の側を流れる提無津川からここに侵入する気だ!川側の警備に人員を割けと言っただろ!」


大きな声をあげているのは…茶木警視。
茶木警視の推理に毛利さんが自分の推理を話す。
毛利さんの推理は沖野ヨーコちゃんのライブが終わる明晩夜9時頃、米花公会堂近辺からやってくるというもの。
うーん……快斗がヨーコちゃんのライブに予告状を引っ掛けてくる?
提無津川から波に誘われて来るっていうのも何だか簡単過ぎて違う気がするし…。

警視が警官を米花公会堂近辺に集結させるのを止めようと思うけれど、私も暗号が解けた訳じゃないから納得させられる自信が無い。

……ん?
コナン君が時計を見ながらキョロキョロしだした。



『何か、分かったの?』

「分かりそうなんだ……っと、あった」


屈んでコナン君の顔を見ていると、何か分かったのかニヤリと笑った。
好きだな、コナン君のこの謎が解けた時の不敵な表情。



「ねぇ、もう帰ろーよー…こんなとこいてもつまんないよー…。じゃーボク先に帰るか、らっ!?」

『…』


子供っぽく蘭に言って帰ろうとするコナン君の細い腕を握り引き止める。


『らーん!私も用事思い出したから帰るね!』

「えっ…名前も帰るの?」

『ちょうど良いから探偵事務所までコナン君送ってから帰るよ。危ないからお姉ちゃんが送ってあげるね』

「え、や…ボク一人で帰れ」

『一緒に行こうね』

「………ハイ」


ニッコリ笑って言えば観念したのかコナン君が大人しく引き下がった。
…私だけだったら別に良いっつの、とか生意気なこと言ってさっさと帰っただろうに蘭の前だと大人しいんだよね。
あ、何か切ない。


そんな切なさを心に感じながらコナン君と手を繋いで毛利探偵事務所を目指した。

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