似ている?
園子からの電話で渋谷ショッピングしようという話になり、蘭も入れて3人で歩く。
雨が降っているからなのか、傘の所為で横断歩道が渡りにくい。
うまーく人の波を避けながら今の話題に耳を貸す。
「怪盗1412号?」
「そう!今、若い子が結構ハマってるおじさんの泥棒よ!探偵の娘なのに知らないの?」
「あのねぇ…だからって事件好きな訳じゃないわよ」
「名前は知ってる?」
『うん、知ってるよ。最近、良く新聞に出てたりするよね』
だがしかし、快斗は園子が思うイメージとは全然違う。
そもそもおじさまじゃないし、彼は変態です。
「それで?その泥棒さんをウチのお父さんに捕まえてほしいってわけね…」
「そうよ!今、米花博物館で宝石の展覧会やってんの知ってるでしょ?そこにパパが出品してる我が家の家宝を怪盗1412号から守ってほしいのよ!幸運を呼ぶ“漆黒の星-ブラックスター-”を!!」
…さすが鈴木財閥。
展覧会に宝石の出品なんて普通じゃ考えられない。
鈴木家には他にもたくさんの宝が眠ってるんだろう。
「でもウチのお父さんが出しゃばんなくても警察の人に任せておけば…」
「警察に捕まっちゃったら、そのまま連れて行かれちゃうじゃない!蘭のお父さんが捕まえたら、直接彼の顔を拝ませてくれるかもしれないでしょ?」
「顔…?」
「だって1412号は世界中を騒がしてる大怪盗よ!どんな顔してるか気にならない?ねっねっ!?名前も気になるわよね!!」
テンションMAXな園子のマシンガントークは終わらない。
そりゃあ怪盗紳士と騒がれている怪盗1412号に世の女性はたくさんの理想を描いているのかもしれない。
けれど…その正体を知っちゃってるから何とも言えない私。
ぽわんぽわんと、彼を思い出す。
「名前ちゃーん!女性の一人暮らしは危ないからボディーガードも兼ねて夜を一緒に過ごしませんか?」
『…凄い女性に優しく紳士っぽさを出してますけど、快斗の方がよっぽど危険です』
「何言ってんだよ!名前が危ないと思って紳士なオレが守ってあげるのに!?」
『紳士さんはそんな風に手ワキワキさせません』
「オレ、テクニック良っ!?」
『それ以上言うな変態』
…思い出して苦笑が生まれる。
あんな変態な子が世界中の人を虜にする大怪盗様になるんだから驚きだ。
永遠の秘密にして欲しい、キッドが快斗だってこと。
……あ、でも案外ギャップ萌えっていうのもあるのかな?
そんなことを考えていると前方から、
『あっ…』
考えてる人がっ!?
傘の所為で私に気付かなかったのか快斗はスッと私の横を通りすぎて行く。
隣にいた蘭も気付いたのか、ゆっくりと快斗が行った後ろを見る。
「新一!!」
『ら、蘭!?危ない!』
信号が赤なのに横断歩道に飛び出そうとするから蘭の手を引いて止めた。
蘭が傘を落としてしまったから濡れてしまわない様に、自分の傘を蘭の頭上に差す。
雨が私の頭に思い切り降ってきたけど蘭が濡れなきゃ良いや。
「今っ…新一が!見たよね?」
『え?見てないよ?工藤君に似てる人とかじゃないかな』
取り敢えず、見てないって言った方がいいかなと考えた結果。
あれは快斗だし、此処に工藤君がいたっていう話になったら後々厄介なことになりそうだから。
それでも納得できなさそうな蘭を連れて私達は休憩にとカフェに入った。
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