運命の人 | ナノ


二人の違い



「…そらそーや!どーやらオレは勝負にこだわりすぎて冷静やなかった…」

「うっ……ぐぅ…」

『工藤君!?』


考えに耽っていたら工藤君が胸を押さえて苦しみ出した。
蹲る様に上半身を屈ませていく工藤君に近付く。
戻るんだ、小学生の体に…!
このままじゃいけないと苦しんでいる工藤君に耳打ちをする。



『蘭が来るのを避けることは出来ないと思うから階段下りた所にあるトイレの中に隠れておいて。出来るだけフォローするから』

「……っ」



もう声も出せないのか小さく首を振るだけで終わった工藤君から離れて階下へ急いだ。
取り敢えずトイレのドアと玄関のドアを開けておいて…準備はオーケー。
上から蘭の声が聞こえて来るからきっと工藤君を見付けたんだと思う。
短いその会話を聞いていると階段から落ちて来た。
尋常じゃない落ち方をしてきたけど大丈夫かな!?

落ちて来た工藤君に持って来ていた眼鏡を渡して肩を貸す。
密着している面積はさっきよりも小さい筈なのに彼から伝わって来る心臓の音はドッドッと早く、重い。
蘭が降りて来ない早いうちにトイレに工藤君を入れて、玄関の外へ出た。



『……ふ、ぅ…間に合った、かな?』

ちらりと中を覗くとトイレから工藤君の叫び声が聞こえて来た。
蘭がトイレを勢い良く開けたのを見届けてから、ふと小さく息を吸う。

また流れそうになる涙をしまって、演技モードに入った。



『工藤君!?』


工藤君が着替えて出て行ってしまった様に装い声を出す。
自分でやってて何だか切ないな、と思ってしまったけれどしょうがない。



「名前!新一、行っちゃったの?」

『あぁ、うん…バタバタと着替えて事件がって出て行っちゃった』

「…そっか。あ、コナン君が倒れちゃったの!」



蘭の言う通りトイレから出されたコナン君が壁に寄りかからせられて座っていた。

それからコナン君をお医者様に診てもらった。
やっぱり無理をしていたコナン君の体は相当ヤバかったらしく、お医者様に少しだけ怒られてしまった。
本当は家で安静にしていなきゃいけない身なのに連れ出すのは良くないですよ、とかそんなことを延々と。
ごもっともなことを言われて蘭と一緒に頭を下げた。










辻村さん宅から帰って来た私はコナン君を寝かして家に帰る。
平次も飛行機に間に合いそうだからと颯爽と帰って行く。





「ほな、行くわ。また会いに来たんで!」

『うん、またいつでも遊びに来て。今度はちゃんと前もって連絡してくれると助かるかな』


今日みたいに突然、玄関前に立たれてると心臓に悪いから。
ほなな、なんて言って私の頭をぽんっと軽く叩いていった平次は楽しそうに駅の中へ入って行った。
……工藤君にもたくさんされた様な気がするけど、私ってそんなに叩きたくなる頭なのかな?
…あれか、身長が小さいからか。
良いもん、この世界の私は1カ月で5センチくらい伸びてって工藤君達にあっという間に追い付いてやる!
………そんな叶わないだろう願望を持っています。

そういえば、さっき平次に叩かれた時はドキドキしなかったなぁ…と思い出す。



…変わりつつある自分の気持ちに困惑し始める。
考えない様に、考えない様に、そうやって自分の気持ちに気付かない様にした。

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