運命の人 | ナノ


熱い体と共鳴する心音



『コナン君っ!!』


バタリと倒れたコナン君に駆け寄る。
額に手を置くとそれだけで高熱だと分かるほどに熱い。



『蘭っ!警察の人にお医者さん呼んでもらうように頼んで!』

「わ、分かった!」


数秒遅れて駆け寄ってきた蘭に指示した。
…これで暫く蘭を来ないようにすることは出来たけど、本当にお医者様にみせた方が良いかもしれない。
元の体に戻るせいもあると思うけど、風邪には変わりないし…コナン君に戻ったらすぐに診てもらえるように。


『すみません、何処か横になれる所はありませんか?』

「じゃあ俺の部屋のベッドを使え!部屋は廊下のつきあたりだ」

『ありがとうございます!』


コナン君を抱いて殺人現場を後にしようとすると…入れ違いに平次が入ってきた。
ポケットから出たテグスを持って。

…解けたんだ、謎が。
でも今はそれより…、










教えてもらった部屋のベッドにコナン君を寝かす。
苦しそうに胸を押さえるコナン君を見ているのが辛い。
横にある小さな手を両手で握ったら微かに目が見開かれた。



『今、蘭がお医者さん呼んで来てくれてるから暫くは時間稼ぎ出来ると思う。その方が元に戻る所見られないし』

「わり、な……っぅ、ゲホゴホッ!!」


余りの痛みに胸を抑えて咳き込むコナン君が勢い良く上半身を起こす。


『…私の手、痛くなるくらい握っても良いから』

「は、ぁ…ぐっ……う!」


見開いた目が苦痛に閉じた。
こんな小さい手のどこにそんな力があるんだってくらいの力で握り締められる。
ギリギリと軋む骨よりも、苦痛に歪んだ顔が私の胸をキリキリと締め付ける痛みの方が強い気がした。

突然、コナン君が目を見開いたまま動きを止めた。
嘘っ…本当に、やば、い?



『く…、工藤君!』


こんなに、コナン君が苦しんでいる姿を見るのが辛いなんて思わなかった。
コナン君に負けないくらい、私も彼の手を握り締める。
お願い……早く、早く…戻って!

何でこんなに胸が痛いんだろう。
原作の通りいけばコナン君は工藤君に戻って、それで事件を解決する。
死んでしまう訳じゃない、なのにどうしてこんなに…怖いの。



「ウアアアアァァ!!!」



一際大きな叫び声を発したコナン君に体がびくついた。
…握っていたコナン君の手が大きくなっていることに気付く。



「……名前」


久し振りに、彼の声を聞いた。
甘くて、落ち着いて、私の心をぽかぽかと温かくする声。
彼の喉から聞こえた自分の名前の威力は計り知れなくて、涙が頬を伝った。
泣いてしまっていることを隠したかったけれど肩は震えてしまっているから丸分かりだと思う。



「名前」

『……工藤、くん?』


何で、抱き締められているんだろうか。
密着している所為か直に感じる工藤君の体は熱い。
バクン、バクン、工藤君の心臓の音が聞こえる。
それに共鳴するように私の心臓も同じくらいバクバクと鼓動を始めた。
お、おおぅ……どうした私の心臓っ!?
ぎゅう、と抱き締める腕の強さを強くして来た工藤君にあたふたとしてしまう自分が何だか可笑しい。
…別に男の人に抱き締められるのが初めてな訳じゃないし、それよりもっと先のこともやったことがあるくらいなんだから…これくらい。
なのに、何で…何で私はこんなに動揺してるんだろう。




『………くっ…工藤君、どうしたの?ね、熱で頭イカれた?』

「…………いや、正常」

『いやいやいや、それもっとヤバイよ君。正常な物の考え方で私を抱き締めてるんだったらもっと駄目だから』

「…嫌、か?」

『へっ…?』

「オレに、こうやって、抱き締められんの」



誰だこの子は…!

いや、私こんな格好良い工藤君知らないっ!
工藤君がノーマル装備で格好良いことは知ってるよ!?
でも私の知ってる工藤君はそりゃあもう恋愛とか女性関係に疎くってむっつりで…と、とにかくこんなに堂々と女の子を抱き締められる様な子じゃない!
あれかな……私のこと女の子と思ってないのかな。
……有り得る、妹とかに見られてそうだ。

……と、いうか!熱の所為なのか声に吐息が混じってエロいです…っ!
しかも耳元だからダイレクトに耳に響いてゾクゾクする。
その声を確信犯でやってたら、この子の将来が恐ろしい。



『そ、そそっそれよりも!』

「………」


思ったよりも自分の動揺が声に出てしまってるなと落ち込む。
平常心平常心……ふぅー…心の中で深呼吸をして自分を落ち着かせた。


『早く書斎へ行かないと。事件、解けたんでしょ?』

「ん…あぁ」


体を放した工藤君の肌色の面積が多くて勢い良く顔を逸らしてしまう。
大丈夫大丈夫私は大丈夫。
すっくと立ち上がって、このままじゃ駄目だと心の中で断りを入れて洋服タンスを開けた。
中に入っていた服を拝借する、お借りします貴善さん。
工藤君の方を見ない様に服を渡す。



「…オメーってさぁ、自分の肌は平気で見せるのに人のは見れねーのかよ?」

『はいっ!?別に私は人前でストリップになる様な趣味はないよ』

「……出会った初日にオレの前に…ブラジャーで出て来たのは誰だよ」

『あれは気が動転して…』

「…ごほっ」



話している間に着替え終わった工藤君が咳をしているのを見て背中を摩る。
…早く、お医者様に見せた方が良いな。



「名前!お医者さん呼んで来たよ!!」

『…っ!?』



バタバタと蘭ともう一人、きっとお医者様だろう足音がこの部屋へ向かって来る。
どうする、……どうするっ!

prev / next

[ back to top ]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -