運命の人 | ナノ


アドレス帳に増える名前



リビングで待っている平次にコーヒーを出す。
しかし…平次も思った通りイケメンだなぁ。
目の前でコーヒーを飲んでいる男の子は工藤君と同じで、誰が見てもイケメンと言うだろう青年。
…この世界はイケメンだらけで困る。
元の世界じゃそんなホイホイイケメンがいたら驚きだし、女の子の争奪戦が勃発してるだろう。



『それで、大阪からわざわざやって来てどうしたの?』

「工藤に会うて確かめよう思てな。オレと並び称される男かどうか」

『そっか。…でも、確かめなくても工藤君は凄いよ』

「……」


疑わなくたって、工藤君の推理は凄い。
漫画でだってそう思ったけど、数少ないピースを見つけ出して組み立てて当て嵌めて…そして辿り着いた真実を順序立てて推理する。
自信満々に言うその顔も、謎が解けてキラキラした笑顔を浮かべている工藤君を見るのも私は好き。
だから、



『そのうち分かると思うけど…工藤君は私が知る探偵の中で一番凄い。服部君に負けないくらい。服部君も凄腕の高校生探偵だけどね』

「くっ………あっはっはっは!!」

『え…?』



え、何、何でいきなり大爆笑してるの平次は!?
私の言葉に変な所あった!?


「あんた、おもろい奴やなぁ。気に入ったわ」

『あ、ありがとう…?』


喜んだけど…さっきの会話のどこで平次に気に入られる所があったんだろう?


「でも、ほんまに工藤の女やないんか?此処は工藤の家やし…」

『えっとね、私の両親事故死しちゃってて。お母さんと仲の良かった工藤君のお母さんが私を引き取ってくれたの』

「あー…何か、堪忍な」


それを言うのは私、かな。
いつかは勘付くと思うし今言っても良いんだけど…うん、色々と問い詰められそうだし…何より面倒臭い。
だったらコナン君が工藤君ってバレた時に言ってもらおう、なんて。




「せや、工藤が最近出入りしとるらしい毛利探偵事務所に連れてって欲しいんやけど…」

『あぁ良いよ。用意するからちょっと待っててもらっていい?』

「おー」


毛利探偵事務所に行くならコナン君のお見舞いにも行こうかな。
平次を案内してコナン君の様子を見たら変えるからラフな格好でいっか。
あんまり平次待たせたら申し訳ない。




『お待たせ、服部君』


準備が出来て待たせていた平次と一緒に工藤邸を出る。
毛利探偵事務所への道中、他愛のない話をしながら向かった。



『それじゃあ服部君は和葉ちゃんって幼馴染みの子がいるんだ』

「めーっちゃややこしい女やけどな」

『でも…好きなんでしょ?』

「はぁ?何でオレがあないな女。こっちから願い下げや」


……この世界の子はどの子も素直じゃないなぁ。
想い合っているのにくっつかないから、こっちがやきもきしちゃう。
好きじゃないって言ってるのに、和葉ちゃんのことを話す時の平次の顔はとっても優しげで…そんな風に想われている和葉ちゃんが羨ましかった。
あぁ…青春だねぇ。



「ちゅーか、その服部君って何やねん。平次でええって。玄関先で会った時はそう言うとったやろ」

『うん、まぁ……んー、じゃあそう呼ばせてもらおうかな。私のことも名前で良いよ』


別にそう言われたら断る理由はないから遠慮なく呼ばせてもらおう。
…和葉ちゃんに会った時が何だか怖い気もするけど。
しかし…ずっと標準語の土地にいたから関西弁って新鮮だなぁ。



「あ、忘れとったわ。工藤が帰って来たらオレに連絡くれへん?これ、オレのアドレス」

『…ん、分かった!』


小さな紙切れを手の平に乗せて固まった。
…平次君。
いや、私が知ってる人だし別に良いかなって思うんだけど…こんなさっくりとアドレス交換まで持ち込むテクニックが怖い。
平次はきっと工藤君のことしか考えてないし、そんな邪な気持ちは無いと思う。
「ねぇねぇ、アドレス交換しない?」なんて言って来た同級生先輩よりかは何百倍も良いとも!
でも私が本当にただの西の高校生探偵だってことを知ってるだけの人間だったら…ちょっと驚くよ。


なんてことを考えながらも、数時間後には私のアドレス帳に服部平次の名前が記載されるのを思うと少しだけ、嬉しくて頬が緩んだ。

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