西の高校生探偵
あれから歩美ちゃんとは特に仲良くなって家に遊びに来てくれるようになったりと、良く私に懐いてくれているみたい。
セットというか、いつも一緒にいるからなのか歩美ちゃん一人で来る方が珍しいけど。
そんな充実した時を過ごして数日が経った。
〈くしゅんっ!うあー…〉
『風邪?』
〈んー…みたいだな。寒ぃ…〉
電話口の相手はさっきからクシャミをしたり、ずるずると鼻を啜ったりと大忙しみたい。
大丈夫かなぁ?まぁ蘭が看病してくれるだろうから心配は無いと思うけど。
『あんまり無理しないようにね』
〈わーってるよ。…んな心配しなくても大丈夫だって〉
『…大丈夫じゃなさそうだから言ってるんだけどなぁ。そういえば…蘭に電話してる?』
〈え?何で〉
………この子はどーしてこう……自然と口から出る溜め息を止められなかった。
工藤君が心配なのか、ちょこちょこと私に連絡来てる?と聞いて来る蘭を見ていると…好きになったのかと思う。
その変化が嬉しい、筈なんだけどな。
『心配してるみたいだから電話してあげて?』
〈蘭が心配ぃ?んな訳ねーだろ、今日もピンピンしてたぜ?〉
『……女心が分からないと一生、彼女出来ないよ』
〈別にオレは、〉
『取り敢えず!蘭に電話するまで私に電話してきちゃ駄目だからねっ!』
〈はぁっ!?ちょ、お〉
一方的に切ったスピーカーからツーツーと音がする携帯を閉じる。
…まったく!私なんかよりも蘭を心配しなきゃいけないのに!
でも、大丈夫かな…風邪。
後でお見舞いにでも行こうか…うーん。
悩んでいると家のインターホンが鳴った。
うん?誰だろう?
はーい!と返事をして玄関へ向かう。
ガチャリと扉を開けて居たのは予想外の人。
『あ………平、次』
「あん?オレのこと知ってるんか?」
しまったっ!!やっちゃった!?
関西弁の色黒で帽子を被っている男の子は間違いなく服部平次その人。
あれ、デジャヴ?えーっと…こういう時の切り抜け方……、
『知ってるよ。関西では有名な高校生探偵でしょ?こっちでも君の名前は聞くから』
「ほぉー、さすがは工藤の女っちゅう訳やな」
『はい?』
今、訳の分からない言葉を言われたんだけど。
私が工藤君の女?ないないない。
居候の威力って凄いんだな…。
『えっと、私工藤君の女じゃないからね?』
「ちゃうんかい。あんたの友達の鈴木っちゅう女はそう言うてたけど」
『断じて違うから』
なんってこと言ってるの園子は!!
誤解に拍車をかける様なこと平次に話さないでよ…。
『あ……えと、取り敢えず家に入る?お茶出すから』
「すまんな」
玄関先で話すよりは家の中で話した方が良いと思うし。
大阪から来てるんだから疲れてると思うから少しだけでも休んでもらって。
こうして、関西からの客人は工藤家に足を踏み入れた。
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