運命の人 | ナノ


子供の純粋な疑問



家に皆を招き入れてリビングに座っていてもらう。
工藤家に居候させてもらってから初めてこんなにたくさんのお客さんを招待した気がするな。
来たことがある人なんて蘭と園子に阿笠博士、あとは快斗くらい…………あれれー、何か私って友達少ない感じになってる…?
…学校でもほとんど蘭と園子と一緒に過ごしてるからなぁ。
あ、そういえば……最近、快斗と連絡取ってない。
新聞見たりするとちょこちょこ怪盗1412号、怪盗KIDが現れる様になったから忙しいんだと思う。
今度、変に勘繰りされないくらいにやんわりと体に気を付ける様にってメールしようかな。



作ったレモンパイを切り分けて人数分のお皿にのせる。
あとはジュースとフォークと…。
カチャカチャと音を立てながら用意していると私の足元に歩美ちゃんが来ていた。


『ん?歩美ちゃん?』

「歩美も手伝う!」


………何、この可愛い子。
あぁやっぱり小さい子は良いな!
コナン君を初めて見た時もそうだったけど心臓にどっきゅんされる可愛さだよ、この子達は。

そんなお人形さんの様な歩美ちゃんに手伝ってもらってリビングで待っている3人の所へ持って行く。
待ってました!と言わんばかりに目を輝かせている元太君は元気良くいただきまーす!!と言ってレモンパイを食べ始めた。
元太君に続いて皆もフォークで口に運ぶ。



『…どうかな?』

「うんめーっ!!」
「美味しいー!」
「外はしっとりとしてて、中はふんわりしてて美味しいです!」


率直な感想を述べてくれる子達に笑顔が浮かぶ。
でも食べさせたいと思っていた張本人のコナン君はモグモグと口を動かしているだけで何も言ってくれない。
…んー何か気に入らない部分があったかな?


『コナン君はどう?』

「…ん……美味い」

『ふふっ、ありがとうございます!』


良かった!
この世界に来てコナン君が好きだから喜ぶだろうレモンパイを何回作ったか分からない。
最初はあまり作ったこと無かったから勝手が分からなくって失敗したりしたけど、美味しいって言われるほどには上達出来たことが嬉しい。




レモンパイも食べ終わった子供達は、初めて入った家だから珍しい物に興味がそそられるのか家を探索し始めた。
小学生に見られて困る様な物は無いし、子供達に好きにさせようかな。
何かあったらコナン君が止めてくれるだろうし。
きゃっきゃと楽しそうな子供達の声を聞きながら皿洗いをする。

数分で皿洗いを終えて戻ると歩美ちゃんが駆け寄ってきた。
元太君と光彦君は少し離れた所で遊んでいる。



「ねぇねぇ、名前お姉さんと新一お兄さんは同棲してるの?」

『へっ?』

「っ、げほ!ゲホ、ゴホッ!!」


……ちょ、椅子に座ってるコナン君がジュース噴き出したんだけど。
歩美ちゃんにちょっと待ってと言ってタオルを持ってコナン君のベタベタになった口元を拭いた。


「い、良いっ!自分で出来っから!!」

『そう?』


引ったくられたタオルでごしごしと口を拭いているコナン君の顔が赤いのが余計に可愛くて頬が緩む。
工藤君だったらこんなことしないけどコナン君だと可愛過ぎてついやっちゃうんだよね。
歩美ちゃんが何でコナン君は顔を赤くしてるんだろうと疑問を抱いて首を傾げているからまた可愛い。

あ、同棲してるの…だったっけ。
転校してきて暫く経った後に出た婚約者騒動を思い返す。
やっぱり一緒に暮らしていたら生まれる最初の疑問だよね。
しかし……小学1年生が同棲なんて言葉知っているなんて恐ろしい。
小学生ってもっと、ぴゅあじゃなかったかな?
……この子達は違うか。コナン君と触れ合ってもっと現実とかけ離れたことを体験すると思うし。



『んー…歩美ちゃんの質問に答えるとね、同棲っていうか居候させてもらってるっていうのが正しいかな』

「え?じゃあ、名前お姉さんは新一お兄さんのことをどう思ってるの?」

「………」



凄い質問をぶつけてきた歩美ちゃんに私は目を点にするばかり。
ジュースまみれになった机を拭いていたコナン君の動きが止まったのが見える。
…お耳がダンボ状態だけど。

コナン君……いや、工藤君のことか。
頭の中に浮かんだ工藤君を思うと胸がぽかぽかと温かくなる。
そうなる胸の疼きの正体を、難しく考えちゃいけない気がした。
難しく考えたらきっと…戻れなくなる。



『弟…手のかかる子供、かな』


私の答えを聞いた瞬間、コナン君がジト目で見て来た。
弟って言われるの…嫌なの?






『でも…大切な人だよ』


無くしたくない、大切な人。
その気持ちは絶対に変わらないから。

そう言って笑ってコナン君を見たら目を逸らされてしまった。
クスクスと笑って、勿論、仲良くなれた歩美ちゃん達も大切な子だよと頭を撫でて言ったら歩美ちゃんが嬉しそうに笑う。
バタバタと遊んでいる小学生の子達とまた遊べたらな、なんて思った。

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