近付く運命の時
スピードを出して走るタクシーの後部座席に毛利さん・蘭・探偵さんが乗って、助手席にコナン君を抱っこした私が乗っている。
「……近い…」
『…何でそんなに私から離れようとするの』
「当たり前だろ…!」
後ろから見るとコナン君の耳が真っ赤になっていたから吹いてしまった。
恥ずかしいんだろうなぁ……かわい。
可愛くて腕の力を強めたら固まってしまったから、そのまま抱き続ける。
「あっ…その交差点を右に…」
コナン君の指示通りにタクシーは道を行く。
近付くに連れて心拍数が上がってきている気がする。
コナン君を抱き締める腕が少しだけ、震えた。
「…え……名前…姉ちゃん?」
『………』
震えが伝わってしまったのかコナン君が首を回して私の方を見やる。
悟られない様にニコリといつもの様に笑った瞬間、タクシーが止まった。
目の前に立つのは大きなホテル。
「このホテルにあの大男が…?」
緊張した面持ちで言葉を言ったと思ったら、コナン君がダッと走り出す。
それに続いて私達もホテル内に入った。
フロントの人に探している大男の写真を見せると、802号室に居ると告げられた。
急いでエレベーターの所まで行き降りて来るのを待つ。
待っている間に気付かれない様に一歩一歩と後ろへ下がった。
エレベーターが1階に降りて来てドアが開く。
中に居た女の人が持っていた大きなスーツケースがグラリと揺れて落ちてしまったのを、コナン君達が助けているのを隠れて見つめる。
私が居ないことなんてすぐバレてしまうと思うけど…少しの時間稼ぎくらいなら。
明美さんを追う為に先にホテルを出てタクシーを捕まえた。
少しだけ前に出してもらって待機。
タクシーの運転手さんに怪訝な顔をされたけど気にしない。
……出て来た!
明美さんが乗り込んだタクシーが私の乗っているタクシーの横を通り過ぎて行く。
それに続く様にコナン君と蘭も出て来たことが確認できて、窓を開けて二人を呼ぶ。
『二人共!早く!』
「名前!」
蘭とコナン君が乗り込んで前の車を追ってもらう様に頼む。
…助けれるだろうか、私に、明美さんを。
近付いて来る運命の時に、足が震えて来た様な気がした。
明美さんを追って港に入るが…見つからない様に離れて追っていたからなのか見失ってしまった。
『私はこっちを探すから蘭とコナン君はあっちを探して!』
「分かった!行こう、コナン君!」
「……」
コナン君が私を見つめて来たけれど蘭に促されて私が言った方向へ走って行った。
…私も急がなきゃ。
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