変える決意
広田さんが来た後、私も彼女のことが気になるからと蘭に言って私も関わらせてもらうことにしてから一週間が経とうとしている。
…あれから真夜中ずっと考えていた。
私のこれからの行動。
ずっと頭の中を締めるのは広田さんと、哀ちゃんの顔。
お姉さんを、家族を失ってしまう気持ち…分かるから。
ズキッと鈍く頭痛がした。それと一緒に涙が溢れ出す。
やっぱり…そんな思い、させたくない。
〈何かあったらオレがどうにかするから、心配すんな!〉
機械越しに聞いたあの人の言葉が蘇る。
思い出した工藤君の言葉で……決心した。
物語を、変えてしまうかもしれない。
それでも明美さんを助けたい。
顔を上げた名前の瞳は決意に満ちていた。
蘭から電話をもらって探偵事務所に行くと……サングラスをかけた男がビシッと手を指差して犯人はあなただぁ!なんてやっていた。
『…何やってるの?これ』
「探偵の特訓らしいよ」
……探偵の特訓、ねぇ。
とても犯人を追いつめている感じの声には聞こえなくて苦笑してしまう。
蘭に聞いてみるとあの人は探偵らしく別の人間に広田健三さんの捜索依頼を受けていたらしい。
そして…広田さんの身に危険が迫っていることも。
ふと、その場にコナン君はいなくて何処に行ったのだろうと見回していると事務所の扉が開いた。
「あれ?何で名前姉ちゃんが此処に…」
「あ、お帰りコナン君」
『お帰りなさい、コナン君。広田さんのことが気になって何かあったら蘭から連絡してもらう様に頼んでたから』
「そ、そうなんだ。蘭姉ちゃん!ボク、小学校から帰って来る時に雅美さんを見かけたよ」
「えっ本当!?…お父さん!」
探偵の特訓とやらをしている毛利さんへ蘭が話しに行く。
ちらりとコナン君を見て、蘭達には聞こえない様に声を発した。
『…ねぇ、コナン君』
「あん?」
決意してきたことやこれから行おうとしていること。
頭の隅に追いやっていた迷っていた部分がコナン君の顔を見たら吹き飛んだ。
これから私がどうなったとしても、その所為で未来が変わってしまったとしても……私はもう、後悔しない。
『私、後悔しない様に生きることにしたから。この世界で頑張って生きるよ』
「…ああ」
優しく柔らかく笑ってくれたコナン君に私も微笑む。
この世界に来れたのは運命だったと、思いたいから。
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