運命の人 | ナノ


人探しの依頼人



時はあっという間に過ぎていってコナン君が小学校に転校したりと着々と物語は進んでいっている。
…そして、私の物語も、進んでいった。





毛利探偵事務所の上の蘭の部屋で勉強会。
工藤君がいなくなってしまったから蘭に理数系を教えてもらっている中、毛利さんがやって来て依頼人が来たことを告げられた。


「依頼人が来たみたいだから、ちょっと事務所に行って来るけど…どうする?」

『……んー、私も行っていい?』

「うん!それじゃあ、行こっか」



蘭と一緒に事務所へ行くとコナン君もちょうど帰ってきた所らしく一緒に依頼内容を聞くことになった。
…その、依頼人の顔を見て目を見開いてしまう。
来た……来てしまった。
原作を読んで助けたいと思った人の一人。

宮野明美、これから出て来る哀ちゃんの、宮野志保のお姉さん。
心の中で葛藤が生まれる。…助けたい、と。
そんなことをしちゃいけないなんて分かってる。
…どうしよう、どうしたら良いんだろう、私は。



「お願いします、探偵さん!私の父を探して下さい!!」

「は…はい…」


広田さんの剣幕に毛利さんが冷や汗を流したのを見た。
大きな丸眼鏡に髪を三つ編みにして高校生だと名乗る広田さんは言った通り高校生に見える。
確か広田さんって私より年上だったよね?
変装が上手いというか…あれかな、綺麗だから何しても似合ってしまうのね。

広田さんが出てきた時の話を思い起こす。
……例の10億円強奪事件の犯人で、成功したにも関わらずジンに騙され射殺されてしまう。
でもそれもぼんやりとしてしまっていて余り正確に思い出せない私は眉を顰めるしか出来ない。
あぁ…本当に私、忘れてしまったのかな。

蘭がお茶を用意するのを手伝いながら広田さんがお父さんの写真と特徴を伝えている。
名前は広田健三さん、身長は170センチ、年齢は48歳。そして健三さんが猫好きでカイ・テイ・ゴウ・オウの四匹の猫を飼っているということ。
それを聞きながら蘭が淹れてくれたお茶を毛利さんと広田さんのところへ持って行く。


すると、後ろからコナン君がストーブの紐に足を引っ掛けてしまったのか広田さんが座っているソファに飛び込んでしまった。



『……何やってるの?コナン君』

「アハハハハ…」


空笑いをするコナン君を呆れながら見ていると、広田さんの目から涙が零れ落ちた。



「小さい頃に母を亡くして…父は私のたった一人の身寄りなんです…もし父の身に何かあったら私……私…」


顔を覆って泣き出す広田さんに胸がモヤモヤとする。
ただ泣き続ける広田さんの声が探偵事務所に響いた。




「では、よろしくお願いします…毎日連絡入れますから…」

「あ、ああ…」

「大丈夫よ、雅美さん!うちの父さん名探偵だもん!きっと見つかるよ!!」


蘭の言葉に広田さんは笑って会釈をする。
可愛らしい笑顔を見せる広田さんを見て、その時私はただただ顔を顰めることしか出来なかった。

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