運命の人 | ナノ


チョコのお返し


「……おっとっと、待ち合わせの彼かな?」

『え?』



快斗の言葉に公園の入口を見たら待ち合わせ相手の工藤君が見える。
……ん?顔が怒ってる?



「んじゃあ俺、行くわ。名前とは、またいずれ会いそうな気がする」

『…私もそう思うわ』


絶対に、貴方とはまた会う。
次は貴方が白い衣装を着ている時に。

手を振って工藤君が来る方向とは逆に行く快斗を見送った。





「悪い、遅れた。…さっきのやつ、誰?」

『ついさっき出来た友達だよ』

「はぁ?ついさっきって…」

『まぁまぁ!それにしても…米花公園に何かあるの?』



原作では工藤君は快斗の事なんて知らないだろうし、今彼の事を知るのはまずい。
そう思って話題を逸らした私をいぶかしんだ目で見た工藤君が観念したように息をつく。




「いや、まぁ…その、ほら。今日ってさ」

『今日…?』



今日がどうしたと言うんだろう。今日は3月14日だけど…。



「何が良いかとか、どういうのが良いのかもわかんねーから……」


バサッと渡されたのは袋に入ってずっしりと重い何か。
開けて良い?と一言断ってガサゴソと中身を見るとそれは今日発売の大人気ミステリー小説の上下巻。
え…何だい?これは。



「だからっ…ホワイトデーだろ!今日は!」

『あぁそっか!…って、普通はお返しってチョコとかじゃないの?』

「別に良いじゃねーか、お返しなら」



ロマンチックの欠片も無いホワイトデーのお返し。
しかもこれ前、工藤君も読んでみたいって言ってたやつじゃないか!



『ロマンが無いー』

「うるせー。それに…プレゼントはもう一つあるんだよ」

『え?』



工藤君の言葉にハテナを浮かべる私の頬に冷たい水が落ちてきた。
嘘!雨!?

そう思ったけれどそれは白く、ちらちらと降ってきて私の手の平に落ちてすぐに水になった。



『あ……雪!』

「オメー今朝、雪見たいって呟いてたろ?」

『え…聞いてたの?』

「リビングに行こうとしたらオメーの声が聞こえたんだよ」

『盗み聞きは駄目だよ工藤君』

「聞こえちまったもんは、しゃーねーだろ」



でも今年最後の雪、見れて良かった。

ちらちらと落ちてきて地面を少しずつ濡らしていく雪を手の平にのせながら笑った。



「……名前」

『んっ?』



首に暖かいものが巻かれて、見ると工藤君が着けていたマフラー。
首もとがとても温かくなったけど、私とは逆に工藤君が寒そう。
風邪を引かれてはいけないと、返そうとすると鼻を摘ままれた。



『ちょ!何!』


鼻のつまった声が出て恥ずかしい。ていうより、私の今の顔そうとう変だと思う!


「オメーの鼻、赤すぎて笑える。寒いんならマフラーしてくりゃ良かったのに」

『だって急いでたし…私のマフラーこの前、解れちゃったから』

「…んじゃー、それやるよ」

『……これ?』



工藤君が指差したのは今、私の首に巻かれているお高そうなブランド物のマフラー。
さっきまで工藤君の首に巻かれていたからなのか、彼の匂いがする。



『…ふふっ、嬉しい。ありがとっ!でも工藤君は大丈夫?』

「オメーと違ってそんな柔じゃねーよ」


……自分だって鼻赤いくせにそんな事言う所とか…何だか可愛いなぁ。

こんな事をされたのは初めてだからなのか心臓はドキドキしている。
前の世界ではスタンダードに市販のチョコレート貰っただけとかだったから、こういう他とは違う形で貰えるのはとても嬉しい。
暫く降って来る雪を見てからルンルン気分で家に帰った。








気分の良い一日を過ごした私は何時もより少し遅めの夕御飯を食べた後、工藤君から貰ったミステリー小説を読んでいる時携帯が鳴った。
ディスプレイ画面に映ったのは知らないアドレス。



To: ○×△□@xxxxx.ne.jp
Sub: おーす!
本文:
黒羽快斗で登録よろしく☆
今度はデートに誘うから付き合ってくれよな!

そんじゃま、返事待ってるぜー!



………どういう事ですか!?
何で快斗が私のメールアドレス知ってんの、私教えてない…いつ盗み取った?
登録よろしく☆じゃないって!



『……快斗の奴…』


…でも返事打っちゃう私って一体。
カチカチとボタン操作をしてメールを作る。そんなに長文じゃないからすぐに出来た。それを送信して携帯を横に置く。



まさかあの黒羽快斗と繋がりが出来るとは…。
工藤君に感謝しなきゃ!
間接的ではあるけど、工藤君が公園に呼んでくれなきゃ快斗とは出会えなかった。
いくつもの偶然が重なって快斗との出会いに繋がった事実に少し嬉しい。


でも……メール返って来るの早くない?
1分もかからずに点滅している携帯に驚く。
女子高生かあの子は!

読書を再開しようとしていた手を止めて快斗に返信するべく、もう一度携帯を開いた。

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