運命の人 | ナノ


胸のくすぐったさ



『それでね、トロッピーをもふもふしてから写真撮ってもらったんだー!』



昨日行ったトロピカルランドの魅力を思う存分、蘭と園子に話している放課後のカフェ。
目の前の蘭はニコニコ顔で聞いて、園子は呆れた様な顔で聞いてくれている。



『ちょいと園子さん!聞いてる?』

「はいはい、聞いてるわよ。アンタの旦那自慢は止まらないわね」

『……はい?』


何…旦那?誰が?………トロッピー?


「トロッピーじゃないわよっ!新一君よ、新一君!」

『…は?何で工藤君が出て来るの?工藤君は蘭の旦那様だもの』

「私は新一の事、幼馴染み以上には見てないよ?」

『…はい?』



幻聴だな…うん。
蘭が工藤君の事を好きじゃないなんて有り得ない。



「蘭は今までも言ってたわよ?新一君の事は異性として好きじゃないって」

『嘘!?』

「ホント」



いつ言ってた?そんな事、聞いた覚え…、
もやもやとしっかりしない記憶の中、蘭の声がする。


“私、新一の事好きじゃないよ。……名前?聞いて…ないね”


……言ってたかもおぉ!!
もしかしてあれかな、認めたくない言葉だったから右耳から左耳に抜けていったのか。

でも、おかしい。
…工藤君だけじゃなくて蘭もだなんて。
あぁ…やっぱり私がこの世界に来たからなのだろうか。




「名前ってさ、私と新一をくっつけたがるよね」

『へ?』

「そうそう!」



…バレてました。
だって原作では付き合ってはいなかったけど、ラブラブっぷりを見せつけられていたし。
それはこの世界に来てからでも当たり前の事だと思っている。



『だって工藤君と蘭は幼馴染みだし、隣に並んでる所見ると理想のカップルじゃん。だから二人がくっつけば嬉しいなぁって』

「それはこっちの台詞だよ!私、新一と名前が二人で話してる所…凄く幸せそうで羨ましいもん」

『えっ!そうなの!?』

「分かるわ、それ。付き合ってもう何年目よってくらい幸せそうに喋ってるんだもの。妬けちゃうわよね〜」


そんな風に見られてるの?私と工藤君。
幸せそう…確かに工藤君と話してるのは楽しいけど、園子が言う様に付き合って何年目かのカップルに見えるくらいなんてどれだけなんだろうか。



『ちょ、そんなんじゃないよ!』

「アンタは違うって言っても新一君はそうじゃないかもよ?」

「それに…名前が新一と話してる時の顔好きだな。すっごく可愛いもん!」

『………蘭』

「ん?」

『私、可愛いって言ってくれる蘭のが可愛いと思う』

「へっ!?」



見つめた蘭が可愛く頬を染めるから、それがまた可愛い!
絶対、蘭の方が工藤君に似合っていると思うんだけど。

……カップルか。嬉しい様な悲しい様な。
トリップしたらキャラクターとのアハハーウフフーなんて素敵恋愛が待っていると思ってた。
でもそれはトリップしていないからこそ望める願望で、いざこうして本の中のキャラクターと触れ合ってしまうと都合良くそんな関係になれる訳も無く。しかもそれが原作で相手が決まってるキャラクターなら尚更。

……工藤君とそんな関係になったら、


『………』


あれ、ちょっと待って。ちょっと待て!
何でこんなに胸がくすぐったいんだろう?
ドキドキして、でもその胸のくすぐったさが心地良くって……この言い表せれない様な感情は、………ハハ、まさかね。



『まっさかぁー…』

「……突然、百面相しだしてどうしたんだろ?」

「さーぁ?まぁ、私らから見たら笑えるわね。私達の声聞こえてないみたいだし、この顔写メって新一君に送っちゃおうか!」




…そんな会話が目の前でされているとは気付かずに、私の百面相がパシャリと園子の携帯カメラで取られていた事を知ったのは家に帰って工藤君に笑われた時だった。
くそぅ…園子の奴…!
京極さんという彼氏が出来たら私も園子のあんな顔やこんな顔撮ってやる!

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