魔法のメイク
有希子さんが言ってくれたのでリビングの椅子に座って芸能人気分を味わっている私。
まさか人にメイクしてもらう日が来るなんて思ってなかった。
元女優さんなだけあってメイク道具もたくさんあって専門的で見た事のないものもある。
先に着替えて来て、と言われて服を着替えてリビングにやって来たらどどんとメイクボックスが2つ置いてあった時は目が点になった。
ど、どれだけ気合い入れてメイクしてくださるんでしょうか…?
数十分後、何もせずにただ目を瞑ったりしていただけの私は有希子さんの目を開けて良いわよーの言葉に目を開けた。
鏡に映っている自分の顔を見つめる。
『…ふわー』
髪もアイロンでくるくると巻いてくれたお陰で、これはもう誰なの状態。
普段何もしないでストレートだった髪は胸元でくるくると巻かれている。
顔も有希子さんの魔法の様なメイクによってあの腫れぼったかった瞼はもう分からない。
さすが黒羽盗一に変装術を教わっただけあるなぁ。
メイク技術もピカイチ!
『すごーい』
「最後にグロス塗って…はい、出来たっ!」
『ありがとうございます!』
「とても綺麗だよ」
『エヘ…』
紳士代表優作さんに褒められると照れますので、その素敵な笑顔を向けないで下さい…!
本物のメイクさんにやってもらったと思うくらいの出来に、もう一度鏡を見て笑った。
嬉しいなぁ…私も有希子さんくらいの腕前が欲しい。
「やっと用意出来たの…か、よ」
私服に着替えて来た工藤君がリビングにやってきてメイク終わりの私と視線を合わせる。
え、何、何で顔赤らめてるのよ。顔赤らめるくらい怒ってるの?
しょうがないじゃない、女の子は色々と用意に時間がかかっちゃうんだから。
『そんなに怒らなくても良いのに』
「違うわよ名前ちゃん。新ちゃんは」
「わーわー!!ほら、行くぞ名前!」
『えぇっ!?あ…待ってよ!それじゃあ、行って来ます!』
すたこらと行こうとする工藤君を慌てて追う。
工藤夫妻に手を振る事を忘れずに私達は家を出た。
いざ行かん!トロピカルランド!
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