お腹を空かせた探偵さん
漸く一日が終わった。
今日ほど一日を長く感じたのは久し振りかもしれない。
休憩時間毎に来る子達は学年の垣根を越えて、先輩達も来る様になった。…転校生ってそんなに珍しいですか!?
あとはHRを終えて帰るだけ。
先生の話が終わって教室を出て行く。
よし、帰る準備をしよう。
「名前」
『え!?あ、ごめん!ちょっと待って』
ちょっと早すぎないかね工藤君!?
私のクラスは今、HRが終わった所でまだまだ帰る準備が出来ていない。
……しかし、工藤君はやっぱり人気なのね。
うちのクラスに彼が来た瞬間、周りがざわついた。
元大女優に大人気小説家の息子なんて物件、そうそうお目にかかれないもんな。きっとほとんどの女の子が狙っているんだろう。
でも駄目よ!工藤君には蘭っていう恋人がいるもの。
帰る準備も完了して鞄片手に廊下で待っていた工藤君の元へ行く。
『お待たせ』
「いや。あ、スーパー寄るか?」
『うん、今日何が食べたい?』
「…オムライス」
『子供』
「うるせー。急に食べたくなったんだよ!」
クスクスと笑った私に工藤君が軽く額を押してきた。転ぶ…!
一週間くらい前にもオムライス食べたと思うんだけどね。
じゃあ卵買って、ピーマンに玉葱…。あ、ピーマンはあったかな?
お腹を空かせた工藤君を満足させる為にも早く家に帰ってご飯の支度しなきゃ。
ここ数週間で工藤君がいる生活に慣れてきていたし、工藤君と喋る事も普通だと思っていた。
でもそれは私の中でそう感じているだけで、周りから見たらきっと違っていたんだと思う。
それが明日の地獄の始まりだとは気付かずに。
prev / next