運命の人 | ナノ


Angel



有希子さんが外国にいる優作さんの元へ帰って数日後。



帝丹高校の冬休みが終わった。それは私のこの世界での本業が始まるという事。副業は工藤家専属のメイドです。
…また高校生をやると思わなかった。いや、誰だって卒業したら二度と繰り返す事なんてないと思うけど、私はどういう訳かもう一度高校生になる。
高校生についていけるかな………精神的な面で。
ああ、不安になってきた。クラスの子に馴染めなかったらどうしよう。


洗面所の鏡で見る私は元の世界だったらコスプレ?なんて聞かれそうな帝丹の青い制服。ネクタイも締めて…鏡の前で笑ってみた。
こんなぎこちない笑顔じゃ高校生は怯えちゃうよ。スマイルスマイル……よし!

自分に言い聞かせてリビングへ戻ると準備をして起きて来た工藤君が座っていた。




『おはよう、工藤君。どうかな?帝丹の制服』

「似合ってると思いますよ」



…それだけか。一言言っただけでまた新聞を読み出した工藤君に溜め息をつきたくなる。
中身は高校生じゃないから似合うかとっても不安なのに…あと二言くらい欲しかったな。

まぁ、あれだけ長い時間蘭と一緒に暮らしているのに告白すら出来ないヘタレな工藤君にそれ以上を求めるのは無駄だと踏んで、作っておいた朝食を机に並べていく。
いただきます、と言って二人で朝食をとった。

あと数時間もしたら帝丹高校で高校一年生としての生活がスタートする…すぐに二年生になってしまうんだけど。
そう思うと朝食が上手く喉を通らなかったけど無理やり飲み込んだ。






『行って来ます』



外から見る大豪邸に行って来ますと言ってから登校する。
……まさか隣に工藤新一を連れて登校する日が来るとは思わなかった。


知らない道を通っている為、右左と見ていると後ろから工藤君を呼ぶ可愛らしい声。
この声は……Angel!!





「おはよう、新一。あれ?」

「おう」

『…おはようございます』



あのAngelが目の前に!
本人を見ると大きな瞳が私を見て目一杯開いている。
…そりゃあこんな子が幼馴染みだったら好きになるよ。私だったらなる。
でも何故か今の時点で工藤君は蘭の事を意識してないんだよねぇ…これはお姉さんが一肌脱ぐしかないか!




「新一?この子…」

「あぁ、母さんの友達の娘の名字名前さん」

『名字名前です。家庭の事情で今日から帝丹に入学するんだ』

「そうなんだ!私は毛利蘭。蘭って呼んで?」

『蘭、ね。私も遠慮なく呼び捨てにして!』



昨日、考えた私と工藤家との設定。さすがに血の繋がりは無いから遠い親戚とも言えなかった。コナンが遠い親戚設定になるし…私は別ので。
コナンと有希子さんの設定みたいに、祖父の兄の娘のいとこの叔父の孫…なんて長い設定は私は覚えられないから、簡単に有希子さんとうちのお母さんが友人という事にした。

でも…こんなに早く友達が出来るとは思わなかった。
これは蘭と幼馴染みの工藤君に感謝だな。






「同じクラスになると良いね」

『うん、私も蘭と一緒のクラスになると良いなぁ。その方が安心出来るし』

「新一ももっと早く言ってくれれば良かったのに」

「うっせーな」




……ごめん蘭、それは無理なの。工藤君との知り合い歴はまだ2週間くらいだから。

前の学校の事とかを聞かれて、元の世界の高校時代の事を話していたりしたらいつの間にか帝丹高校に到着していた。





「ここから入って右に真っ直ぐ行けば職員室があると思うんで。一人で大丈夫ですか?」

『うん、大丈夫。ありがとう』

「?何で新一は名前に敬語使ってるの?」

「え゛」
『!?』



しまった!そうか、そうだよね。同い年に普通は敬語なんて使わないよね!
慌てて工藤君を引っ張って蘭から離れる。




『私に敬語使わなくて良いから!何か悲しいけど……私の事、21歳だと思わないで』

「分かった」

『うん、案外早い順応性が気になるけどまぁいいや』



最初っから工藤君は私の事、21歳だと思ってなかったからなぁ……切ない。



「名前?新一?」

『あっごめんね!ちょっと場所もう一回確認してて。一緒のクラスだと良いねっ!』

「うん!また後で」




後ろ手に手を振りながら二人から離れて、工藤君に言われた通りに歩き出した。
蘭達と同じクラスになる事を願いながら。

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