運命の人 | ナノ


仮面の下にいたのは、



平次が登場したからなのか順調に事件は解決の方へ向かっている気がする。
容疑者は蒲田さんと一緒に劇を見に来ていた人と、帝丹3年生の先輩の4人の中に犯人がいること。
とにかく4人の飲み物とガムシロ、ミルクを鑑識の人に任せることが決まって目暮警部が指示を出している。

そういえば…今日はコナン君、大人しいな。
いつもは率先して毛利さんや目暮警部の周りをうろちょろしているのに。



「そーいえば蒲田君、車のダッシュボードごそごそしてなかった?」

「ああ…免許証を探してるって言ってたけど…」

「私達、蒲田君の車でここへ来たんだけど何か彼の様子がおかしかったのよ…」

「おい!その車の所へ案内してもらえ!」

「はい!」


鴻上さんの言葉で高木刑事と車を調べに数人の刑事が外へ出て行く。
う、わ…結構雨降ってるなぁ。
雷も鳴ってるし、朝のあの清々しいくらいの晴れが嘘みたい。
……ああっ!?そういえば洗濯物、干してきちゃったよ!?…今頃、ずぶ濡れか…今日は止めとけば良かった、私の馬鹿。
こんな風に平常な思考が出来るのはコナン君と平次が事件を絶対に解決してくれるだろうって信頼してるからなんだろう。

そんな二人を見てみるとコソコソと喋っていた。
…事件、解けたのかな?
二人で自分の推理を言い合って、今日は平次の推理ショーかなと思っていたらスッとコナン君が平次から離れて行ってしまった。



「お、おいちょー待て!コラ!」


「相変わらず仲ええね、平次とあの子…」

「うん…」


蘭が悟ったような表情で2人を見つめているのを私は見逃さなかった。
平次と仲が良い理由はコナン君が工藤君だから。
…蘭のことだから全部自分の中で考えて、誰にも相談しないだろうからそんなことは一言も言われていないけれど。
きっと大変な事件に巻き込まれて姿を隠さなきゃいけなくなって、阿笠博士に作ってもらった薬か何かで小さくなってる…蘭の予想はこんな所かしら。
まあそっちの方が実際にありそうで何とも言えないけれど、現実はもっと危ない事件に首を突っ込んじゃってるんだよなぁ。

………工藤君を好きな蘭からしたら、とても辛いことだと思う。
でもそれを言ってしまったら工藤君の思いも全部、踏み躙ってしまうことになるから。
蘭を危険に巻き込みたくない、それは私も同じ。
だから…私は笑顔で嘘をつく。
罪悪感を感じながら、蘭…園子…私の大切な人達、全てを騙す。
…私が感じている工藤君への想いも、全部全部殻に閉じ込めて。



自分の中で落ちていくのが分かったから、思考をシャットアウトしようとしたら都合が良いことに体育館に高木刑事が戻って来た。
手には蒲田さんの車内にあったという青酸カリと思われる薬物を持って。



「こっちにもさっき鑑識から連絡があったよ…4人の飲み物に毒物が混入された形跡はないと。亡くなった蒲田さんが自ら毒を口に運んだ可能性が高いとな」

「じゃ、じゃあ…」

「ああ…これより我々は、本件を自殺と断定して…」

「いや…これは自殺じゃない。極めて単純かつ初歩的な…殺人です」

「え、」


目暮警部の言葉が遮られ、クリアーな声が耳に届く。
それはさっきまで私の相手をしていた黒衣の騎士、スペイドから発せられた。
…違う、だって、黒衣の騎士役は新出先生で…そもそも彼が此処にいる筈がない。

だけど彼から聞こえる声は私が聞きたかった声で、…愛おしくて仕方がない人のそれ。
何で、どうして、分からない。
頭がぐちゃぐちゃになって、手足が震える。
意味もなく涙が出そうになってそれを堪えることに必死だった。



「そう、蒲田さんは毒殺されたんだ。暗闇に浮かび上がった舞台の前で…しかも犯人はその証拠を今もなお所持しているはず。ボクの導き出したこの白刃を踏むかのような大胆な犯行が…真実だとしたらね」


スペイドの仮面を脱いで現れた顔は、平次の変装した彼じゃない…間違いなく彼自身だった。



「工藤!?」


平次の驚いた声が響く。
それから目暮警部や毛利さんの声も、体育館にいた他の生徒の声も。
だけど私は工藤君から目が離せなくて。





…………何で?

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