運命の人 | ナノ


来る帝丹高校学園祭



それから10日後。
コナン君は術後の回復も良好で、あと2、3日もしたら退院できるらしい。
あれ?そうだとすると……ちょうど学園祭の日と重なる?
少年探偵団の皆もコナン君が心配だと毎日の様にお見舞いに来てくれた。

ピコピコと携帯ゲームで遊んでいるコナン君は先生の言った通り、咳をしていて風邪を引いている様子。
…探偵団の皆に風邪がうつっちゃうのも悪いし何より体を休ませてあげたい。



「コナン君、いこっか。皆もまたお見舞いに来てあげてね?」

「「「はぁーいっ!!」」」


元気良く返事をした探偵団の皆に手を振って、私達は病室へ帰ろうと車椅子を引いた。
車椅子を引く私と一緒に来てくれた蘭と園子と病室へ向かう。



「退院が二、三日後ってことは学園祭の真っ最中…三日後だったら私達の劇の当日よ!」

「あぁ、そうだねぇ」

「そういえば、新一君に連絡した?」

「え?」

「だーかーらー、アンタの旦那よ旦那!!名前があーんな可愛いドレス着て姫役してるなんて知ったら飛んで帰って来るわよ」

「それは無いなー。というか旦那じゃないってば」

「何でそんなこと言いきれるのよ?」

「事件で忙しいだろうし……蘭が姫役だったらすぐに帰って来ると思うけどね」



コナン君、見たかっただろうな…蘭のハート姫姿。
あんな演技コナン君に見られたらたまったものじゃないと、内心ホッとしていますごめんね。
おまけにコナン君が見ていると思うと緊張して演技出来ない様な気がする。



「ね、ねえ!蘭姉ちゃん、その手首どうしたの?」

「ん?これ?劇の練習中に捻挫しちゃってね…お陰で騎士役降板。代役に新出先生が買ってでてくれたんだ」

「しかも新出先生と名前のラブシーンがこれまた凄くってさー!謙遜してるけど名前も演技力あるから、本当に愛し合ってる恋人同士に見えるって皆言ってるのよ」

「!?ちょ、そんなことないってば!何をおっしゃるんですか!!」


新出先生の演技力が凄くてリードしてもらってばかりで、私なんて全然だし。
恋人なんて新出先生に申し訳ない。


「………気になる?」

「えっ!?あ、いや……別に」


蘭が疑う様にコナン君の顔を覗き込んだ。
……蘭、何か変。
やっぱり、コナン君が工藤君だって…バレた?

そればかり気になって、病室に着くまで私は蘭の顔色を窺っていた。







来る帝丹高校文化祭当日。
学内にはたくさんの人、人、人。
一般の人も来ているからなのか学内は人でごった返していた。
何故かそれは私達のクラスが演目をする体育館内も一緒で。



「…何でこんなにたくさん!?次、私達のクラスなのに…」

「わ、凄い…!」

「それだけ前評判が良いのよ!何てったってあのロミジュリを凌ぐ超ラブロマンスって銘うっちゃったもんねー!」


舞台袖から見てみるとパイプ椅子が並んでいる客席は生徒と一般の人で埋まっていた。
き、緊張で…緊張で心臓がバックバクなんだけどもどうしたら良いですか。



「名前姉ちゃん」

「えっ!?あ、コナン……君?」


コナン君の声に少しだけ安堵しながら振り返ると、マスクを着けているコナン君が毛利さんと一緒にいた。
ああやっぱりまだ風邪が治ってないんだろうな。
いつもと雰囲気違う気がするし。


「まだ風邪引いてるのに…家で寝てなきゃ」

「名前姉ちゃんとも、蘭姉ちゃんとも見に来る約束したから」

「寝てろつったのに聞かなかったんだよ、このボウズ」


毛利さんがコナン君の頭をガシガシとかく。
あぁ…そんな風邪気味の子の頭を揺すったら駄目です!



「名前さん、ちょっと良いですか?ラストのセリフのきっかけですが…」

「あ、はい、今行きます」


新出先生に呼ばれて少し離れた所で話す。
……いよいよ緊張感がピークに達しそう。




「大丈夫ですよ。名前さんが人一倍練習していたのは知っていますから、そんなに緊張しなくても練習の成果を出せば良いだけです。何かあれば僕もフォローしますから」

「…新出先生」


こういう男の人がモテる代表っていうんだろうな。
気遣いも出来て優しい、お医者様だからか細かい所にも気付く、女性が放っておかないね。
新出先生のお蔭で少しだけ心に余裕が出来る。
この余裕もきっと舞台に立っちゃうと無くなってしまうんだろうけれど。

…楽しめれば良い、かな?
滅多に出来ない経験だろうしね。
よし、頑張ろう!

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