運命の人 | ナノ


不安の先に



何時間かした後、手術中のランプが消えた。
手術室から出て来た医師に詰め寄る。


「あのっ…どう、ですか?」

「成功しましたよ、運良く急所も外れていたので良かった」

「…良かった」


足の力が抜けてへたりと座り込んでしまった。
本当に…どうなるか分からなくて。
手術室から出て来たコナン君の顔を見たら、安心感で涙が溢れて来た。

それからすぐコナン君は病室に運ばれた。



「私……コナン君が目覚めるまでついてるね」

「私も…」

「蘭はコナン君に400ccも血あげたんだから、これ以上身体を酷使してちゃ駄目だよ。本当はすぐにでも寝てもらいたいくらいなんだからね」

「……でも」

「…じゃあ、9時まで。9時まで私がついてるからそれまで寝て?コナン君のこと、心配なのは分かるけど私は蘭の体も心配だから」

「………分かった」


渋々、と言った様な蘭の表情に少しだけ心が痛んだ。
蘭も皆も取り敢えず、家に帰ることになって病室には私とコナン君だけ。

病室にあった丸椅子に腰を下ろして、目を瞑ったままのコナン君を見つめる。
不安で、不安で……コナン君が死んでしまうんじゃないかと思うと、怖くて震えが止まらなかった。
手術室から出て来た瞬間、涙がボロボロと流れたくらい安心して。
ぎゅっと握ったコナン君の手は冷たかったけれど、ちゃんと生きているって分かる。


早く…目を開けて欲しい。
それでまた、馬鹿みたいにホームズの話をしてもらいたい。
ドヤ顔で事件のことを話してもらいたい。

………名前を、呼んで欲しい。







それから何時間経ったんだろう。
コナン君は本当に目を覚ます?
時間が経てば経つ程、不安が募っていく。



「………工藤君…っ」


怖いよ、君がいなくなると思うと。
小さな手を握り締めたら、今まで返って来なかった反応が返ってきた。
それは微かな力だったけれど、私の手を握り返してくる。



「………っ名前、」

「…っつ…!」


嬉しくて声が出なかった。
たくさん言いたいことがあったのに。



「……良かっ…たぁ……」


その一言しか出なかった。
子供みたいにボロボロと涙が出て来て、自分でも恥ずかしいことなんて分かってるけど止まらくて。

私がみっともなく泣いていると、小さな手が伸びて来て頬に添えられた。



「…コナン君?」

「………っ…泣くなよ。オメーが泣いてると、どうしたら良いか分かんなくなる」


ハッとした様な表情を作った後、手を離した。
…どうして、そんなに苦しそうな顔をするんだろう?
君がそんな顔をする必要は無いのに。
でもドキドキで涙は止まった。



「…でも本当に良かった。もう……起きないんじゃないかって」


数時間前の恐怖を思い出してまた俯いてしまう。
でもそんな私の不安なんて吹き飛ばすくらい、コナン君はいつもと同じように笑った。



「バーロ、オレはそんな簡単に死なねーよ。……オメーを一人になんて、しねーから」

「………く、こ、こ」


急に真剣な声音になったコナン君に心臓が破裂させられそうになる。
今の言葉に、工藤君が重なって見えた。

な、何か変な雰囲気だよ!何この雰囲気!!
私達の関係に合わないピンク色の空気にしどろもどろになってしまう。
た助けて下さい、心臓が止まっちゃいそうです…お医者様を…あ、此処病院だから止まってもすぐに助けてもらえるかな。
助けを求めているとドアのノック音が響く。
大げさなくらい驚いた私は裏返った声で入室を促した。



「…名前?コナン君は…」

「ら、蘭!!」


お医者様じゃなくて蘭様が助けに来て下さった…!
後に続く様に毛利さんも入室してきた。


まだ痛そうにしている部分はあるけれど、蘭達と話しているコナン君を見て改めて胸を撫で下ろした。
ホッとしたからなのか睡魔が襲って来て。
…そういえば昨日からずっと寝てないんだっけ。
壁に寄りかかったまま、私はそのまま気を失った。

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