運命の人 | ナノ


待つことだけ



「え?キャンプファイヤー?」

「うん!今週の土日にね、少年探偵団の皆でキャンプファイヤーに行くんだけど名前お姉さんも一緒に行こう?」



おぉう…可愛い可愛い歩美ちゃんにキャンプに誘われてしまった。
しかし……探偵団の皆はキャンプが好きだなぁ。
でもそうして行った先々で事件に巻き込まれてしまうのが、コナン君なんだよね。


「………」

「?何だよ?」


じーっと見つめていたらコナン君と目が合う。
まぁ主人公の宿命なんだろうから、事件からは逃れられないんだろうけれど。
それでも危ないことには変わりないから、いっつもヒヤヒヤしている。

今回も事件に巻き込まれるんだろうなー……はぁ。



「一緒に行きたいんだけど土日と予定が入っちゃってるんだ、ごめんね」

「そっかぁ……じゃあまた今度一緒に行こ!」

「うん、約束ね」


小さな指と定番の歌を歌いながら指きりをする。
可愛いなぁもうっ!






なんて会話をしたのを思い出しながら、持って来たフェイスタオルで顔の汗を拭いた。
あー…やっぱりずっと喋りっ放しはキツイなぁ。
学園祭まで残り少ない為、今週来週と土日は学校で練習している。

それにしても今頃、コナン君達はキャンプかぁ…羨ましい限りだ。



「大丈夫ですか?」

「あ、はい。暑いのもある所為か喉が渇きますね」


新出先生が一息ついている私に近付いてきて心配そうに顔を覗き込んで来た。
本番前に衣装に慣れなきゃいけない、ということで衣装係の皆が繕ってくれたドレスを来て通しているんだけど。
ドレス着れるなんて嬉しい!早く着たいなぁ、なんて思ってた数週間前の自分…どうしてそんなことを思っていたんだ。
最初、出来上がった物を貰って感動で浮かれたけどそれを着て演技するとなると結構キツイことが分かった。
おまけに扉を開けて風通しを良くしていると言ってもドレスを着ていて余計に暑い。


「ひゃ」

「熱いですね…余り無理をし過ぎない様にして下さいね」


新出先生の冷たい手が頬に触れた。
…医師だから意識はしてないんだろうけれど、普通の女の子だったらドキドキで倒れてると思います。


「名前、ちょっと良い?ここの所なんだけど…」

「今行くー!新出先生、心配してくれてありがとうございます!」

「いえ、気分が悪くなったりしたらすぐに言って下さい」

「はい!」


蘭に呼ばれて私は舞台の方へ行く。
暑いけど、頑張ろう!








「ふぁー……くたくただよ」


家に帰って来て、ソファに身体を沈めた。
ご飯用意するのも億劫だ。
今、目を閉じたらすぐに眠りにつける気がする。
…このまま……少しだけ寝ちゃおうかな…。

重くなって来た瞼をゆっくりと閉じる。
夢の中に入ろうとした時、鞄の中の携帯が音をたてた。
ゴソゴソと鞄を漁って携帯を取り出し、名前も確認せずに出る。




「もしもし…?」

「名前!?こ、こコナン君が…っ」

「え?蘭?ど……と、とにかく落ち着いて」

「………コナン君が、撃たれ、て」

「……………え?」









どうやって病院に着いたかも覚えてない。
ただ一心不乱に走って走って、心臓が張り裂けそうなくらい走った。
息が出来なくなって、苦しい。



「コナン君っ!!」


ちょうど着いた時には担架で運ばれようとしている痛々しいコナン君がいた。
周りには蘭も毛利のおじさんも少年探偵団の皆も博士もいて、心配そうな目で立ちすくんでいる。
私はガラガラと運ばれていくコナン君に震える声で話しかけた。


「……っコナンく…き、聞こえる?しっかりしてっ…!大丈夫だから!!」


何て声をかけて良いか分からない。
泣きそうになって、でも泣いてる場合じゃなくて。
大丈夫だって言葉はまるで自分に言い聞かせてるみたいだ。

手術室に入ろうとする瞬間、看護師さんがやってきて焦った様に声を出す。



「先生大変です!前の患者の手術でこのボウヤと同じ血液型の保存血を使ってしまって、在庫がほとんどありません!」

「おいおい…今から血液センターに発注しても間に合わんぞ…」

「あの…私の血で良かったら…。私のこの子と同じ血液型ですから」



……え?蘭って…コナン君の血液型知ってたっけ?
一応、調べて下さいと言う蘭が看護師さんと採血室へ行ってしまった。
まさか…蘭……コナン君の正体が工藤君だって気付いてる?


「あ…哀ちゃん…」

「………えぇ、かも…しれないわね」


私の思っていることが分かったのか、哀ちゃんが小さな声でそう言う。
危害が加わらない様にって工藤君が必死になって、蘭にバレない様に頑張っていたのに。
いつ…?分からない…そんな素振り、なかったのに。

悩んでいる間にコナン君が手術室へ入って行った。
さっきよりは冷静さを取り戻したけど、不安なことには変わりない。
……こういう時、何も出来ない自分が歯痒い。
私は待っていることしか…出来ないんだ。

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -