運命の人 | ナノ


頼れる先生



保健室へ行ったらもう衣装係の女の子達がいて、ワイワイと話していた。
採寸が終わったのかパンツ姿にさせられた男の子がカーテンを開けて出てくる。



「わわ、名字!?」

「皆、採寸してもらってるんだー。木村君は兵隊さんだったよね?」

「あぁ、細かい所まで測られて疲れた…」

「あはは!そうだよね」


肩をぐるんぐるんと回す木村君は疲れた様子で首もゴキゴキと鳴らしている。
役がある子は皆、採寸されてるんだろうなぁ。



「あと森田の採寸終わったら名前の採寸に入るから、ちょっと待っててー」

「はいはーい」


森田君の採寸が終わるまで暇になった私はボーッと突っ立っている。
衣装係の子が話している内容は結構、本格的で凄いなぁと感心してしまう。



「何だか凄いですね」

「あ、新出先生」


帝丹高校の校医でもある新出先生が机で書類を書きながら笑顔で言った。
はー…いつ見ても格好良い先生だなぁ。
何でこう…コナンの世界の人間は格好良い可愛い人ばかりなんだろうか。
…惨めになっちゃう。


「今度の学園祭、劇をやるんですか?」

「はい、オリジナルの劇を。でも不安なんですよね…私に出来るかなって」

「名前さんは何の役を?」

「えっと、ですね……姫役…」

「わぁ、凄いじゃないですか。とっても似合うと思いますよ」


そんなに簡単に褒めてくれた新出先生は大人というか…工藤君や快斗にも見習わせたいくらいの男前さ。
大人の余裕を久し振りに感じて胸がドキドキ。


「でも私にそんな大役が務まるかどうか…」


そう言って苦笑を浮かべる。
自分の所為でこうなったとしても、任されたからには最後まで責任を持ってやり遂げたい。
そんな思いは確かにあるんだけど…それに演技力が伴わない気がして不安でいっぱい。


「良かったら相談にのりましょうか?」

「え?」

「学生時代に何度か主役を演じたことがあるのでアドバイスくらいは出来ると思いますよ」

「ぜっ…是非宜しくお願いします!!!」

「あ…は、はい」


机に乗り出して頼む私に驚きながらも新出先生は頷いてくれた。
主役を演じてるだなんて!そりゃあ新出先生ほどのイケメンならどの学校でも主役引っ張りだこだろう。
そんな経験値豊富な演技の先生が出来ました…!
よし…頑張るぞ。








週に何度かのコナン君との夕食会という名のお泊まり会。
ご飯を食べ終わり、先にお風呂にも入った私はソファに座りながら台本を覚える作業を黙々とこなしていた。
台詞量がある所為か、覚えるのも一苦労だよ。



「ううむ……」

「さっきから何、唸ってんだよ」


お風呂から上がってきたコナン君が唸っている私を見ながらタオルで髪の水気を取っている。
そんなコナン君をちょいちょいと片手で呼んで、私の隣に座らせて髪を拭いた。


「わしゃわしゃー」

「う、わっ!やめろ!」

「良いじゃんかー。可愛い弟が出来たみたいで嬉しいし」

「…オレが元の姿に戻って同じことしたら、あっという間に立場逆転だぜ?オメー、小さいから」

「その喧嘩買ってやろう」

「売ってねーよ」


ささやかな怒りをぶつける様に力強く髪を拭く。
もう良いから!とコナン君が逃げてしまったから私はまた台本を読む作業に入る。



「……シャッフル・ロマンス?」

「ん、これ?今度の帝丹学園祭で2−Bは劇やることになって。それの台本だよ」

「…ふーん……オメーは何やんだよ?」

「ハート姫」

「へぇ…」


手を差し出して台本を見してくれと言うコナン君に台本を渡す。
ペラペラとそれを捲って速読したコナン君の顔色が青ざめていく。
……ん?どうしたんだろう?


「……これ…この騎士役って誰がやるんだ?」

「蘭だよ。本当は瀬田君が騎士役だったんだけど、一回台詞合わせやったら顔真っ赤にしちゃって出来なくって。そしたら園子が蘭にしたの」

「…………ナイス」

「え?」

「何もねーよ。良かったじゃねーか、そうそう主役なんて出来るもんじゃねーぜ?」

「うん、ドレスも着れるみたいだしね」



動きが止まったコナン君が顔を赤らめた。
え、何どうした何で?
そんな可愛らしい顔を真っ赤にした表情を見た私はドキリ。
あぁもう本当に可愛いなぁ…。



「コナンくーん?」

「な、なな何だよ何も考えてねーぞ!?」

「分かったからとりあえず落ち着こうか」

「……っあー!寝るわ…オレ」

「うん、おやすみなさい」



……何が何だか分からないけれど、頭をグシャグシャと掻いてズンズンと自室へ行ってしまったコナン君の背中を見送る。
…まぁ、機嫌が悪い訳ではなさそうだから大丈夫かな。
そう考えて私はまた台本読みに戻った。

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