好きな人は…?
道中、名前で呼んで欲しい旨を伝えたら快くオッケーをいただいたので遠慮なく呼ばせてもらうことにした。
…よし!和葉攻略まであと少しか!?
分かった、この世界が恋愛ゲームになったらこんな感じなんだねっ!
なんてくだらないことを考えながら毛利探偵事務所に着いた私達は、蘭が淹れてくれたジュースと手作りのお菓子でティータイム。
そこには勿論、コナン君もいます。
「ちょっと遅くなるからってメールが来たからどうしたんだろうと思ってたら、名前の所に行ってたんだね」
「聞きたいこととかあって急に押し掛けたんやけど…可愛ぇ子やし、時々大人っぽい表情も見せるしめっちゃえぇ子やね」
「え、なになに止めて和葉にそんなこと言われると照れちゃうよ!?」
「好きな人もいるみたいやし、名前に想われてる人羨ましいなぁ」
……は?ちょっとおおぉっ和葉さん!!?
待って待って!その本人、今私の隣にいらっしゃるから!
しかも食べてたお菓子膝の上に落としてるのに気付かないくらい目開けてるんですけれども!!
「え!?名前って好きな人いるの?」
「あ、いや、その」
蘭さん、その話題を掘り下げる様な話は止めて下さいませんか!?
ピ、ピンチ!ヘルプミー!!
「それって最近、名前に会いに来てる人のこと?」
「蘭ちゃん知ってるん?」
「うん、結構格好良い人みたいで噂になってるよ。名前を狙ってる人ってたくさんいるから、遂に彼氏が出来た!みたいな感じで」
「え!?何それ?」
ていうかそれ彼氏じゃない……快斗です。
会いに来ているというか何と言うかですね、いやそう言われたんですけれど付き合ってはいないので勘違いをしな、
「ねぇねぇ、名前ねーちゃん?その男の人って彼氏なの?その人のこと好きなの?ねーねー、教えてよー」
…………ねーねー…コナン君が怖すぎて泣きそうなんだけど。
100歩譲って服の裾を引っ張る行為は可愛くってよしとしよう。
だけど…笑ってるのに笑ってない目が恐ろしいし、言葉の端々にもトゲトゲしさを感じて冷や汗が出て来た。
どうしたら良いんだろう…でも本当に好きな人が工藤君だって言うのは無理、私の心臓が無理だって喚いてる。
…で、この私の服を握りしめてるコナン君の手が力の入れ過ぎでふるふる震えているのを見ると嘘でも快斗が彼氏だって言うのは私の身が危険。
うぅ……泣きたい。
何でこんなにコナン君は怒ってるのぉ…。
これはあれだよ、彼氏が出来ましたってお父さんにバレた時の反応だよ。
「……その、ですね」
予想以上に恐怖を感じているらしい、乾いた声が出た。
「彼は私の彼氏じゃないし…好きな人って言うのはね、」
「ゆ、優作さん、なの」
「「「え?」」」
…逃げましたとも。
色々と考えて思い当たる私の近くの男の子を思い出して…平次は以ての外、この間会った京極さんもダメ、キッドは…コナン君が機嫌悪くなるのが分かる。
白馬君、は後々に会うだろうから後が怖い。
まぁ………あながち間違っちゃいない気もするけれど。
「優作さんって誰?」
「新一って前話したでしょ?名前が今住んでる所の家主なんだけど…そいつのお父さんなんだ」
「ふーん…そうなんや。でも平次から聞いた話やと工藤君て名前のこと「あああああああああぁぁぁっ!!!!!!」
「!?」
びっくぅ!と体が跳ね上がった。
机に乗り出して和葉が言おうとしていたことを遮ったコナン君の声が大き過ぎて、私達女の子達は口を閉じざるを得ない。
「これからショッピング行くんでしょ!?和葉ねーちゃん日帰りだったら早く行かないと!」
「え、和葉すぐ帰っちゃうの?」
「せやねん。ほんまはもうちょい居たかったんやけど…」
「そっかぁ…せっかく仲良くなれたのにな」
まぁしょうがないか、明日は平日だし学校もあるだろうから長くはいられないよね。
「かっ……可愛えぇ!!」
「んわっ!?」
飛びついて来た和葉が机越しに私を抱き締めて来た。
おぉっ…和葉との距離が縮んだ気がして嬉しい!
触り放題の和葉を蘭が止めて、私から離れていった。
うーん…寂しい。
「ほんなら名前も一緒にいこ!」
「うん、行くーっ!!」
「それじゃあ行こっか」
立ち上がって毛利探偵事務所を出ようとした私の服をコナン君が握る。
「ん?何、こな」
「後で教えてもらうからな」
「え゙」
ど……どうしよう。
泣きそうな私の心境で蘭と和葉とのショッピングを楽しめる訳がなく、この後のことを考えたら苦笑しか生まれなかった。
……何て言い訳したら良いんだ!
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