運命の人 | ナノ


白馬の王子様



「貴方が名字名前さんですか?」

「え?はい、そ…う」


………あれれぇ〜…うん、見たことのある顔ですね。
しかもとっても整った王子様みたいな男の子。
だけど…何で此処に彼が?



「あぁ…申し遅れました、僕は白馬探と言います。よろしく」

「あ、はい…名字名前です、よろしくお願いします」


え、これ何?ドッキリとかじゃないよね?
笑った白馬君の笑顔が輝いて見えて、何の加工がされているのかと思ってしまった。




「……思っていたよりも可憐な方だ。あの男が好意を寄せるには勿体無い」

「っ、あ…の……すみません、白馬君はどうして此処に?」



するりと私の髪を触った白馬君の手が微かに頬に触れたからドキリとしてしまった。
紳士というか…女の子の扱いに慣れているというか、素敵なことには変わりないから良いんだけど。


「………黒羽快斗、ご存知ですか?」

「快斗、ですか?はい、友人ですけれど」

「僕も彼と同じ江古田高校に通っているんですが…彼が今、毎日騒ぎ立てている意中の女性に興味がありまして。…見に来てみたら、舞い降りた天使の様に可憐な貴方に会ったという訳です」


快斗が毎日騒ぎ立てていることにも恥ずかしさを感じるけれど、白馬君の台詞にももっと大きな恥ずかしさを感じます…!
それに何より……貴方の声は、私の耳と心臓を突き刺して来ます。




「…現在、お付き合いしている方はいらっしゃるんですか?」

「え…いませんけれど…」

「それじゃあ、貴方に想いを寄せる一人として…認識していただいても?」

「へっ?」

「どうやら僕は、君に魅入られてしまったようだ」


手を握られ……顔が近付いて唇が触れ、





「待ったあああぁぁっ!!!!」

「……おやおや」

物凄い勢いで遠くから走って来たのは……快斗かな?あれ。
君は50メートル走何秒だ、と問いたいくらいの速さで私達の所までやって来た快斗は私の手を取っていた白馬君の胸倉を掴んだ。


「てんめー!!何で此処にいんだっ!?つーか、オメーさっき名前のこと口説いてたろ!?」

「いけませんか?別に名前さんは君の恋人じゃあないでしょう?」

「いずれオレのもんにする予定だっつの!これ以上ライバル増やしてたまるかっ!!」

「あぁやはりライバルは多いんですね…しかし恋愛というものは障害があればある程、燃える。…絶対に手に入れてみせますよ」


私抜きで進められる話に話題になっている自分は置いてけぼり。
……イケメン2人に挟まれて取り合いになってるなんて女の子の夢ではあるんだけど…人が通っている道でこんな言い合いをされると迷惑なだけです。
羞恥心で穴を掘って入りたい気分だ。


「…だーっもう!名前ちゃん白馬なんか誘惑してんじゃないよっ!」

「してないよっ!?」

「名前ちゃんは立ってるだけで男を誘惑してんの!」

「名前さんはとても魅力的な女性ですよ、今まで僕が出会った女性の中で一番素敵です」

「何で顔赤くしてんだよ!?」

「…おや、脈あり、ですか?期待しても良いんでしょうか」

「いや違うのこれはっ!!白馬君の声が良過ぎてドキドキするだけで」


顔赤くなってた!?
その私の反応で気を良くしたのか、白馬君はくすくす笑って私の耳元に口を寄せた。
快斗よりも、工藤君よりも身長が高いからなのか見上げる形の私に腰を屈めた白馬君が囁く。



「貴方を射止めてみせますよ、必ずね。これが僕の連絡先ですので名前さんの都合が良い時、連絡下さい。待ってます」

「…はい」


卑怯だなぁ…白馬君、囁くように声出してきたから余計に甘く聞こえる。
しっかりと手に握らされた紙を見て、後ろ手に去って行く王子様を見送った。



「……キザすぎだろアイツ!」

「キッドの時は白馬君に負けず劣らずなキザさじゃない。格好良いよねぇ、白馬君」

「はあぁっ!?」

「快斗ももちろん、格好良いよ」

「……っ」


今度は快斗が顔を赤くしているけれど…どうしたんだろう?
快斗が格好良いなんて色んな所でしょっちゅう言われてるでしょうに。



「…あぁもうっ!抱き締めて良い!?ねぇ、オレぎゅーってしたい!!」

「きゃっ!?ちょ、も…!止めなさい!!」


抱き着いて来ようとする快斗を必死に腕を突っぱねて抵抗する。
…こんな人前で何、変態行為をしようとしてるのこの子は!!
パシーンとキレの良い音がしたのは、そのすぐ後。




「まぁでもあれだよね、社交辞令もここまで来ると凄いって感心しちゃうよ」

「………名前ってさぁ…」

「ん?」

「ほんっとに天然だよな。つーか鈍感?」

「何言ってんの、違うよ!?」

「あー良い良い、聞き飽きたってその返しは」

「…違うもん」




……取り敢えず、今日は帰ったら白馬君に連絡することがミッションかな?
どんどん主要キャラと関わっていっている気がするけれど…良いのかしら。

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