一期一会の出逢い
この天使様とあのダンディ紳士様との血を受け継いでいるなら、このイケメン息子が産まれても頷ける。
だって……華が舞っていますもの。
「………そう、トリップをね」
『…はい』
つい昨日工藤君に話した内容を天使様、いや工藤君のお母様である工藤有希子さんに話し終えた。有希子さんは工藤君と一緒で口を挟まず、ただ私の言葉に静かに相槌を打ったりじっと私の目を真っ直ぐ見つめて来ただけ。
「…うん、よし!名前ちゃん、家に住みなさい!」
『は…えぇっ!?』
どういう事なの!?衝撃展開で思わず立ち上がってしまった。
今の私の状況は、しどろもどろっていう言葉が一番合うんじゃないか。
『ちょ、工藤さん……何を言って』
「嫌ぁね、有希子さんって呼んで」
あぁっ…語尾にハートがついてる!絶対についてるよ!おまけにウィンクされてしまってどっきりしてしまったんだけど、どうしたらいいの。
そりゃあ日本中、世界中の人間が虜になるよ工藤有希子。
『で、でも工藤さん』
「有・希・子!」
『……有希子さん。本当に大丈夫です。昨日も泊めていただいて迷惑をかけてしまったんです…これ以上、迷惑をかけてしまうのは』
「貴方、実年齢は21歳で仕事もしていたのよね?だったら新ちゃんの面倒を見て欲しいの。新ちゃん一人じゃ何にも出来ない子だから」
「……おい」
実際問題、学校の件は無しにしても衣食住整い過ぎている工藤邸に住まわせてもらうのは私にとっても好条件だ。
これから一人で部屋を探すのだって両親のいない私にとって容易でない事は分かる。だから…有希子さんの申し出には藁にも縋りたいくらいに飲みたい条件。
工藤君が何も出来ないのは昨日の一件で実感しているけど…それでも。
「ねぇ?貴方、遠慮しているでしょ?」
『…!』
「私はこの世界の人間じゃないから、って。でも…出逢えたもの。人生は一期一会よ?この世界に来たとしても貴方が最初に出逢うのは見も知らない人だったかもしれない。けど新ちゃんに会った。運命かもしれないじゃない?名前ちゃんがこの世界に来るのも…新ちゃんに出逢ってそれから私に会うのも」
有希子さんの言葉が胸に落ちてくる。
運命。
私が工藤君に出逢えたのが運命だとしたら…。
運命だとしたら嬉しいなんてちょっぴり思ってしまった。
「…クスッ、運命を大切にしなきゃね!出逢えたのも縁、遠慮なんてしないで家族だと思ってもらって良いから。それに私ね…」
『?』
「名前ちゃんみたいな可愛い娘が欲しかったのよぅ!!」
『うぎゅ!?』
「……それが一番の本音なんじゃねーのか」
有希子さんの豊満ボディに包まれて息がし辛い。幸せ死?でも天使様に殺されるのもそれはそれで……私は変態でしょうか。
そんな天使有希子様の優しさに甘えて私は、工藤君のメイドさんになるのを条件に衣食住と高校生生活を手に入れた。
……不安でいっぱいだけど、何とかなるんじゃないかなと思えるのは目の前で女神の様な笑顔を見せてくれている有希子さんと…工藤君がいるからなんじゃないかと思う。
本当に、この人達に出逢えて良かった。
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